高専シンポジウム協議会会長挨拶
「高専シンポジウム」発祥の地、久留米へようこそ
高専シンポジウム協議会会長
久留米工業高等専門学校長 上田 孝
高専シンポジウムは、久留米工業高等専門学校の呼びかけにより、第1回が平成8(1996)年1月に福岡県久留米の地で開催されて以降、全国の高専生の研究発表・討議と交流の場として、各地の高専の御理解を得て持ち回りにより毎年開催されています。第1回は70件程度の発表件数でしたが、回を追うごとに発表件数が増え、近年では全国の国公私立高専から約400件の研究発表と500人を超える参加者を数えるほどになりました。
久留米は、古くから交通の要衡として栄え、江戸時代から明治にかけて、からくり人形や国の重要文化財にも指定されている機械式和時計の万年自鳴鐘などを考案・製作した、からくり儀右衛門の名で知られる田中久重(後の東芝の創業者)や、久留米かすりを考案した井上伝、さらに近代に入り、ブリヂストンを創業した石橋正二郎などを輩出した、ものづくりの風土豊かな地です。
第19回高専シンポジウムin久留米は、テーマを “高専から発進!「科学技術・知の創造」” として、これまで50年にわたり実践的技術者を社会に送り出してきた我が国の高専教育の成果を踏まえ、今後、実践性に創造性を加えた技術者教育に向けて、全国の高専が更にイニシアティブを発揮し、我が国はもとより世界の科学技術・知の創造に貢献することへの期待を込めています。
特別講演では、高専での学びを基盤として科学技術・知の創造を実践され、透明なセラミックスの開発に成功された池末明生氏((株)ワールドラボ代表取締役)を講師に招き、製品開発の貴重な経験談なども含めた御講演をいただくこととしております。
また今回は、全国の高専間連携による6テーマの研究ネットワークにおける教員研究活動や福岡県内の3高専が連携したプログラミングや室内飛行ロボットなどの高専テクノロジーの紹介、さらには田中久重の軌跡や復元されたからくり人形や蒸気機関車模型の展示・実演を、小・中学生をはじめ市民の皆様にも公開します。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。
第19回高専シンポジウムin久留米実行委員長挨拶
「第19回高専シンポジウムin久留米」にぜひ参加を!
第19回高専シンポジウムin久留米 実行委員長
(高専シンポジウム協議会 副会長)
馬越 幹男
創立50周年を迎えた高専では、これまで多くの卒業生、専攻科修了生を輩出し、実践的技術者として産業界を中心に高い評価を受けています。その理由は、学生が大学に比べて低い年齢から実験、実習に取り組み、基礎知識に裏付けられた技術を身につけ、さらにはこれらの集大成として卒業研究や専攻科の特別研究の中で創造性や進取の気概が育ったためであると言えましょう。
しかしながら、高専の学生は年齢が低いこともあって、在学中に学協会で研究発表する機会は限られていました。最近でこそ学生の研究発表の機会は増えていますが、これに突破口を開いたのが、平成8年1月に初めて開かれた高専シンポジウムで、これまで全国各地の高専で18回開催されてきました。その道のりはそれほど平坦ではなく、学協会と同等のレベルはあるのか、分野が偏っているのではないかといった課題にすべて応えられたわけではなく、また開催を主導する高専とその教職員の負担も大きいものがあります。しかし、今までの継続開催を支えたのは、約400件まで増えた研究発表件数であり、高専生やその指導教職員であると言えます。
今回は、次のステップとして高専教育に求められている創造性の発露を目指したテーマ “高専から発進!「科学技術・知の創造」” を設定しました。創造性を教育することは果たしてできるのか大いなる疑問ですが、高専にそのよう雰囲気があることは大事なことです。これを具現化するのは、主として研究発表を行う学生の皆さんであり、場を提供できる教職員であると思います。専攻科学生を始めとして、多数の研究発表、参加をいただきまして、広く高専の研究、工学教育を発進できれば、望外の喜びであります。
久留米市は、からくり儀右衛門として知られ、江戸時代末期に佐賀藩での蒸気車や蒸気船の開発、久留米藩での大砲の鋳造や久留米絣の織機の製造という大きなプロジェクトに参画し、さらには明治維新後に起業し、東芝の創業者の一人としても著名な田中久重氏の生誕の地でもあります。エジソンに先んじること約50年、発明家、起業家として名を成したのです。これにあやかって、久留米市、久留米からくり振興会のご協力を得まして、田中久重氏の業績及びからくり人形の展示、実演を行うとともに、福岡県の3高専が協力して、高専テクノロジーを一般公開します。小中学生や保護者の皆様ほか、多数の市民の皆様のご来場をお待ちしております。