目次
2.5.1. 学生へのインタビュー (共同研究実施,生物応用科5年 30人)
2.5.2. 学生へのインタビュー (教員研究実施,生物応用科5年 6人)
2.5.5.インタビューを終えて (コーディネーター,藤道治名誉教授)
本校の現代GP「産学民連携共同教育による実践的技術者育成」(副題:地域企業・社会との共同研究による地域活性化貢献と技術者養成の融合)の取り組みが今年度で終了し、その成果を報告できることは、私どもの大きな喜びとするところです。
本校は、旧制高専から通算しますと実践的技術者の育成を70年に渡って続けてきており、12、000名の卒業生は産業界から高く評価されているところです。最近ではわが国の産業構造の変化やグローバル化に伴って、実践性ばかりでなく創造性も求められており、高専の役割として地域貢献も重要な柱となっています。本校の生物応用化学科を中心とする今回の取り組みは、このような状況の変化に対する具現化の一つと捉えることが出来ます。すなわち、地域企業や研究機関との共同研究を卒業研究に取り入れることによる学生の実践性や創造性の育成であり、近隣の弥生遺跡のルーツを人骨のDNA解析を卒業研究のテーマとして、学生の地域に関する視野の拡大を涵養するものです。また、これらの取り組みを通じて地域貢献にも寄与できればと考えてきました。
福岡県のバイオバレー構想の中核となる久留米地域における共同研究においては、コーディネーターをおくことによって卒業研究にマッチングさせる多数の試みが行われまして、学生は身を持って研究開発の最前線に触れることができ、今後の活躍が期待されるところです。中には学生の就職に結びついたものもありました。また、産学協働セミナーの開催は、その内容が知的財産、食の安全、女性技術者のキャリア形成、企業の求める人材像などタイムリーなもので、学生の意識向上に大変役立ったと思います。さらに、高専と同等あるいは高専に近い海外の技術者養成機関の視察を行い、今後の高専の進むべき道を探る上で貴重な情報がもたらされました。
このような共同教育を始めとする成果は、本校教職員の尽力ではありますが、その意を汲んだ学生の皆さんの参画と地域の産学官民の皆様のご協力なしには実現し得ないものでした。本校の地域貢献は、地域から学生を受け入れて、技術者として育成することが一義的に重要であることは言うまでもありませんが、その過程において地域の皆様との接点をつくることも地域連携の大きな柱となるものです。
今後、現代GPの取り組みは、明らかになってきた課題を含め本校の産学民連携テクノセンターに引継ぎ、一層発展させる所存です。
これまで3年間に渡って、この現代GPの取り組みに邁進してこられました関係者の皆様に敬意を表するとともに、深く感謝いたします。
平成22年3月23日
久留米工業高等専門学校
校長 前田 三男
取組の概要
文部科学省 現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)
平成19年度〜平成21年度
テーマ:産学民連携共同教育による実践的技術者育成
(地域企業・社会との共同研究による地域活性化貢献と技術者養成の融合)
概要
本取組は,地域社会と連携して共同教育を行い,21世紀の日本の工業を担う「個別の専門知識等を融合複合化して使いこなし,社会のニーズに対して新しい技術を工夫できる実践的工業技術者」を育成する試みであって,
@ 地域企業(製造業)と連携して問題解決型の共同研究テーマを設定し,
A 公立研究機関と連携してナノテクノロジー分野の最先端テーマを設定し,
B 久留米市教育委員会と連携して近隣の弥生遺跡のルーツを人骨のDNA解析により探っていくテーマを設定し,
久留米高専生物応用化学科の正規カリキュラムである卒業研究として実施していく。卒業研究指導教員の1年間に渡るきめ細かい指導の下に,研究開発のPDCAをまわしていくトレーニングをすることにより,学生を実践的工業技術者として育成するとともに,地域企業ならびに地域社会へ貢献する。
(取組の概要文字数:354字)
(取組実施対象地域:福岡県久留米市・佐賀県鳥栖市)
@ 取組における学生教育の目標や養成する人材像について
日本経済団体連合会によって平成16年(2004)年に打ち出された提言,『21世紀を生き抜く次世代育成のための提言−「多様性」「競争」「評価」を基本にさらなる改革の推進を』のなかで,与えられた知識だけに頼るのではなく,ものごとの本質をつかみ,課題を設定し,自ら行動することによってその課題を解決していける人材を育成することが急務であるという基本認識が示され,平成18(2006)年9月に独立行政法人国立高等専門学校機構(以下,機構と言う)は,『国立高専の整備について〜新たな飛躍を目指して〜』のなかで,高専は体験重視型の「創造性」教育,即ち,「創造力に気付かせ,それを引き出す教育」としてEDUCATIONを実施できるわが国唯一の学校種であると規定し,輩出すべき人材として「個別の専門知識等を融合複合化して使いこなし,社会のニーズに対して新しい技術を工夫できる実践技術者」を標榜した。
これまでの高専の教育は,大学の工学部と同様に「工学」という学問の教育研究が主体であり,カリキュラムにおいては高校課程+大学理工学部課程のカリキュラムが積み重ね的に組まれ,工業に即応できる課程とは必ずしも言えなかった。また,高専最終学年でなされる卒業研究は,教育的配慮は十分考慮されているものの,教員の専門領域の研究の手伝いや学術論文の追試的な実験が主に行われてきたきらいがある。本取組は,知識重視型の教育を転換し,実際の企業の実戦テーマを正規のカリキュラムに取り入れることにより,工業に即応できる実践的工業技術者を学生教育の目標とする。したがって,本取組が養成しようとする人材像は,この産業界の提言と機構の方針のとおり,「実際の仕事をうまく転がしていける技術者」である。
A 設定する学生教育の目標や養成する人材像のニーズについて
戦後の高度成長期においては,高専卒業生たちは企業で再教育され,そこで課題解決能力を身につけ企業に貢献できる人材に成長し活躍していった。しかし,工業化社会をへて高度情報化社会が21世紀に到来し複雑化していく世界大競争時代に突入した今日では,高度成長期のごとき再教育の余裕はなく,知識偏重でない実践的な能力が教育された即戦力の人材が求められている。余裕の少ない地方の中小企業においては,特に切実である。
日本は知恵で食べていくしかないことは自明の理であり,高等教育機関は21世紀に対応できる人材育成が求められている。学士水準の技術者教育に力点をおいた技術専門高等教育機関は,知識を教授する教育から知識を知恵に転換するトレーニングを与える教育により生産技術,技術開発を支えることができる人材養成にシフトしていかなければならないことは,時代のニーズである。
以上のような21世紀を担う人材育成の理念は比較的早く着想され提起され,正規のカリキュラムに少し加えられた取組は存在するが,現状を大幅に改革しかつ組織的・系統的に取り組んだ例は無い。これまでの伝統的教授方法をすぐに変えていくことは非常に難しい作業であり,高度成長期を支えてきた自負を有する高専教員の意識改革が困難である。しかし,久留米高専では,技術学校としての設立当初のアイデンティティーの原点に立ち返り,平成12(2000)年から本取組につながる改革をスタートさせた。
地域産業界等との共同研究の推進と地域社会における技術開発及び技術教育の振興を目的とする拠点として,平成13(2001)年に産学民連携推進センターを立ち上げ,地域企業・社会からニーズ志向の問題解決型の共同研究を積極的に受け入れ卒業研究あるいは専攻科研究として実施する試みを積み重ねてきた。生物応用化学科では,実践的技術者の養成のために平成14年からカリキュラムの見直しを進めるとともに,卒業研究に地域企業との共同研究(屋上緑化に関する研究,プリザーブドフラワー商品化のための条件確立,付加価値の高い果実袋の開発など多数,詳細は資料参照)を取り入れそこに学生を参加させ,1年間を通して問題解決型の課題に取り組むことによる実践型訓練の教育を標榜してきた。付加価値の高い果実袋の開発では,共同で特許出願するまでの成果になっている。平成19(2007)年3月時点で,行った共同研究は生物応用化学科で延べ45件(全学で148件),受け入れた資金は14,952千円(全学で65,576千円)となっている。そして,生物応用化学科内の全卒業研究件数に占める共同研究の割合は,40%にまで上昇してきている(「データ、資料等」P.10参照)。
学生はこれらの共同研究に取り組んだとき,これまで学習してきた知識を生かし切れないもどかしさを感じ,研究開発の納期が非常にタイトであることから時間に追われる体験をしていた。が,共同研究の中で,定期的な会社へのプレゼンテーションや報告書作成,企業の第一線で働く研究開発技術者とディスカッションで学生達が著しく成長していくことを見ることができ,本システムの有効性を確認していた。
「与えられた知識だけに頼るのではなく,ものごとの本質をつかみ,課題を設定し,自ら行動することによってその課題を解決していける人材を育成」する産業界からのニーズに応え,地域中小企業との共同研究を卒業研究として設定していくこの取組を7年間続け,企業研究を卒業研究として取り組むノウハウを蓄積しつつあり,同時に問題点も抽出している。最大の問題点は,企業の研究には納期が要求されることである。しかし,このことはテーマ設定するときの絶妙なアレンジと用意周到な準備によって解決できる。本取組では,このシステムを正規の授業である卒業研究として取り組めるようにするために,コーディネーター機能を充実させていく。
久留米・鳥栖地域には,産業総合研究所や福岡県工業技術センターなどの先端技術の研究機関が存在する。これらの最先端のテーマを,一部分担し卒業研究のテーマとして実施することは,学生が最先端研究の興味深さと熾烈な競争を体験できるため,企業の研究と同様に価値のあることである。生物応用化学科では,平成18(2006)年度から産総研で行われているナノテクノロジー分野の先端研究を卒業研究(マイクロリアクタにおける油水二流体の流動挙動解析,農業残渣の加圧熱水処理による糖の回収法の検討など4件)として分担して実施した。難易度の非常に高いテーマであったが,教員の丁寧な指導のもとで,学生にとって十分進めていけるものとなることが分かった。
平成13(2001)年,福岡県にバイオテクノロジーを核とした新産業・バイオベンチャーの創出や,関連企業・研究機関の一大集積拠点(バイオクラスター)の形成を目指して「福岡県バイオバレープロジェクト」が開始されている。このプロジェクトは,創薬,バイオツール,機能性食品などのバイオ関連産業の創出を目指しており,インキュベーションセンターなどの施設は久留米市におかれている。本校とは極めて近い距離にあり,ここに進出しているバイオベンチャー企業とも共同研究テーマ(DNAチップ用標識試薬の合成など)を立ち上げている。
久留米高専の近隣には邪馬台国の一つの候補地でもある吉野ヶ里遺跡が発掘されている。その周辺でも久留米市を含めて数多く弥生遺跡が人骨を含めて発見されており,骨学的研究が近隣大学の医学部を中心に実施されからルーツが議論されている。しかし,人骨のルーツをDNA配列の観点から明らかにする試みはなされていない。現在,久留米市教育委員会とこれら人骨のDNA解析を行っていくことを企画中で,卒業研究として2007年4月から実施する。これらのDNA解析は,バイオの最先端技術を駆使する最先端のテクノロジーを駆使するため,卒業研究として設定することは,学生を最先端の研究に参加させる場を提供するものである。バイオ分野における産業は,現在のところ医薬品発酵工業を中心とする装置産業であるが,DNAを扱う現在のバイオベンチャーが近い将来,基幹産業に成長し,多くのテクニシャンが必要とされるので,久留米市のベンチャー企業への人材供給ニーズに応えることになり,福岡バイオバレープロジェクトとのシナジー効果が期待できる。
B 取組が求める成果、効果等について
本取組では,(1)実践的工業技術者を育成するために地域企業の実際のテーマを共同研究として受け入れ卒業研究または専攻科研究として実施するとともに,併せて(2)公立研究機関の最先端研究テーマ(ナノテクノロジー分野)の一つを卒業研究または専攻科研究として実施する,さらに(3)バイオバレー構想の中で,将来のバイオテクニシャン養成を目指して久留米周辺の弥生時代人骨のDNA解析を行うことによりバイオ最先端技術を習得することができるバイオ研究のテーマを設定する。これらの取組は,地域社会の理解を得て高専とともに21世紀の実践的技術者を共同教育していくことに他ならない。
本学科が卒業研究で50%の共同研究を実施したとすれば,年間で20人が,地域企業・社会に対して貢献できることになる。久留米高専の5学科が全てこの割合で共同研究に取り組んだ場合は,年間に100人が,さらに,全国すべての高専がこの割合で共同研究に取り組んだ場合は,5,500人が地域企業・社会に対して貢献できる,この値は決して小さくはない。
・取組への参加予定人数(教員 14人・職員 4人・学生 175人)
@ 取組の趣旨を踏まえた目的を達成するための教育課程、教育方法等について
本取組は,学校内でおこなわれる教育に企業における研究技術開発のテーマを組込み,きめ細かい指導の下に企業のOJTを体験させ,実践的工業技術者を育成しようとするユニークな試みである。しかし,学生にとっていきなり企業の第一線に飛び出すに等しく,大きなギャップを感じることは当然想定される。技術者素養を学ばずして実際の企業との共同研究に学生を参加させた場合には指導教員の負荷が極めて高いものとなる。したがって,本取組を実施する場合には,企業で働く工業技術者としての技術者素養教育を卒業研究に取りかかる4年次までに,次の科目を設置し学ばせる。1年次の商品分解セミナー(生物応用化学入門),3年次の工業倫理,安全工学,4年次の短期インターンシップ(4〜8日),品質管理,技術レポート,機械工学概論である。これらの技術者素養科目の系統的な配置は,学生の工業製品・製造や企業社会・文化を学んでいくために有効に機能しており,高く評価されている(p.6(参考)参照)。本検討は平成12(2000)年から新カリキュラム検討WGを立ち上げ,各学科で取組の趣旨を踏まえた目的を達成するための教育課程の構想が練られていたもので平成18(2006)年度に移行を完了した。
A 取組の実現に向けた実施体制(マネジメント体制、教職員の体制、支援体制、学外との連携)について
本取組の実施体制は,地域企業・社会からの共同研究を受け入れる窓口になっている産学民連携推進センターを活用する。とくに,センター構成員である,センター長とセンター長補である生物応用化学科教員および企画情報係事務職員が現代GP推進グループを組織し重点的にこの取組を推進する。
共同研究のアレンジは,本学の産学連携コーディネーターと福岡県テクニカルコーディネーターによっておこなわれる。すでに,本学の産学連携コーディネーターは各教員のシーズをデーターベースとして持っており,共同研究テーマ設定にきめ細かい配慮ができる。また,産学民連携推進センターの事務を受け持つ事務職は,企画情報係2名として,昨年より1人増員されている。また,産学民連携推進センターと地域企業が産学民連携推進協力会は,共同研究で緊密に連携しており,学外との連携をシステムとして構築している。
B 取組における大学等としての独創性又は新規性について
本取組の独創性は,企業の研究を組織的に卒業研究あるいは専攻科研究に取り入れたところにある。これまで,インターンシップで企業に派遣される試みは多くあったが,インターンは学生が“研修生”として一時的に体験する意味合いが強く,インターンシップ派遣中に高専に戻って報告した際に教員から適切なアドバイスがなされたとしても,学生を訓練する意味において教育機関が主体的役割を果たしたとは言えない。まして,数カ月にわたって企業に預けてまかせきりにし最後の報告会だけを開くとすれば,教員がインターンシップを通じて学生の教育訓練に携わったとは言えない。企業の研究技術開発は利潤追求の目的型であり,期限が切られた非常に厳しい制約があり,傍観としての態度が許されない責任ある研究推進の立場におかれてこそ訓練として成立する。また,最先端テクノロジーの研究においても時間との競争である。本取組では,企業の開発研究や最先端研究を共同研究として設定し,卒業研究で学生が主体的に取り組み,指導教員の監督責任のもとにきめ細かい指導をうけつつ,共同研究先機関と密に打ち合わせを重ねながら,研究開発のPDCAサイクルを回していく訓練を受けていくという,地域企業・社会と密着連携した仕組みを作ったところに新規性が求められる。
「評価委員会」は本取組の進捗状況,教育効果について評価し,改善案を提案し次年度の活動計画に反映させる。評価委員会は,本校校長に産学民連携推進センターの構成員,産学連携コーディネーター,久留米市,鳥栖市の産業のセクション,商工会議所の有識者を加えて組織する。本取組の地域活性化への貢献に対する評価は,明確に数値目標が設定できる。卒業研究の件数を指標とし,卒業研究における共同研究の割合を50%以上にすることである。
@ 取組における教育課程、教育方法等の創意工夫について
本取組は,正規のカリキュラムに何かを付け加えた構成にはなっていない。正規のカリキュラムである卒業研究に地域企業・社会と連携して共同研究を絶妙に組むとともに,技術者素養科目を4年次までに配置したところに創意工夫がある。さらに,技術者素養科目のうち安全工学,品質管理の科目は企業の講師をお願いし,より実践的な内容になっている。
A 取組における実施体制等の創意工夫について
本取組における実施体制の創意工夫は,共同研究を地元企業と本学の間できめ細かくコーディネートする産学連携コーディネーターの配置と産学民連携推進センターの事務手続きを一括して処理していく企画情報係の配置があげられる。共同研究が一時のかけ声によるブームに終わることなく,定常的に運営していくためには,体制の人事配置は不可欠である。
B 取組により期待できる成果等の教育改革への有効性について
本取組は,実践的工業技術者育成の極めて有効な教育方法のモデルを示そうとする挑戦的な試みで,機構が提唱している地域との共同教育(COOP)と合致する。本取組は,全国高専に先駆けて,正規のカリキュラムとして展開される試みで,高専教育の役割期待を具現化ものである。そのため,本検討で蓄積された教育課程,実施体制のノウハウや実施結果を全国高専に情報発信していくことにより,大きな波及効果が期待できる。このいわゆる『久留米モデル』の有効性が示され,全国の高専に拡大されれば,年間約5,000人が日本全国の地場産業に対して貢献できる。
取組の実績と成果
本取組の概念図を下記に示した。本取組は,前章の取組の概略で示したように,学生のための技術者訓練の場を地域社会と設定し,実践的技術者訓練を協働で実施することが中心となっている。
本取組を始めるに当たって,本現代GP推進会議では下記の目標を設定した。
これより,個別目標の達成状況を報告していくことにより本取組の成果報告としたい。
○目標2
使用頻度が高くかつ共同研究に有効な共通機器(マイクロスコープ,レーザー顕微鏡,HPLC,RT-PCRなど)を総合試作技術教育センターに整備し,広く共同研究に供し,学生教育の質を今日の技術レベルとする。
○目標3
海外技術者育成機関の視察をおこない,比較検討することにより次世代工業技術者育成の方策を検討する。
○目標4
協働セミナー,講演会,講習会を開催する。
○目標5
工業教育などの雑誌に得られた成果について投稿し,評価を受けるとともに本取組のモデルを外部に発信する。
○目標1
現代GP専属のコーディネーターにより共同研究先の企業,公立研究機関,行政機関を開拓し,共同研究と卒業研究のベストマッチをはかるアレンジ活動により,卒業研究比率50%の共同研究テーマを設定し,卒業研究の質を向上させるとともに,専攻科(物質工学専攻生物応用化学科プログラム)と他学科へ拡充を図る。
◎シナリオ・主要な手立て
コーディネートの支援を受け,共同研究を受け入れ,卒業研究として設定する。インタビューを通して現状を分析し,効果的な共同研究アレンジ活動につなげる(インタビュー先は,学生(本科5年生,専攻科生),共同研究先企業・研究所および教員)。本校教員のシーズ集を改訂し,共同研究立ち上げに有効な様式を確立する。
近隣の対企業との共同研究件数の推移をFig.
1に示した。2000年に産学民連携推進センターを立ち上げて,順調に共同研究件数は増加し,平均して20件の共同研究を毎年受け入れて実施している。本取組が開始された2007年度から,減少傾向にあった対企業との共同研究は増加に転じ,2009年度には20件の大台を回復している。
Fig. 2は,生物応用化学科が実施する対企業との共同研究の件数を抜粋して示したものである。生物応用化学科の対企業との共同研究件数は,10件から7件に減少している。Fig.
1に示した統計は,企業により正式に申請されたもので,産業財産権の制約があるため,一部企業からは敬遠されている。このため,共同研究のための資金を,奨学寄付金として受け入れて対企業との共同研究を実施するケースが少なからず発生している。生物応用化学科の現員は12名で,対企業との共同研究は毎年平均して12件で,各教員は,自分の研究テーマ(これを教員研究と呼ぶ)と平行して,企業との共同研究を同時に遂行している。
2007年度に現代GPの取組を申請するにあたり,地域社会の協働教育を再考し,共同研究先として企業の他に,公立研究機関,行政機関を加えて,その場を拡張した。幸いなことに,久留米高専の比較的近いところに,産業技術総合研究所(九州センター),福岡県工業技術センター生物食品研究所,同化学繊維研究所,同インテリア研究所,福岡県農業総合試験場の5つの研究所が位置している。さらに,福岡県,久留米市などの行政機関と民間企業が出資している第3セクターである株式会社久留米リサーチ・パーク,久留米市役所,鳥栖市役をとも非常に近距離にある。
Table 1に,地域企業,公立研究機関,行政機関との学生の協働教育の観点からの連携のねらいを示した。
Fig. 3に,共同研究先のマップ(久留米・鳥栖地域のみ)を示した。久留米・鳥栖地域の共同研究先の企業,公立研究所(産総研九州センター,生物食品研究所)は,久留米高専から5キロ圏内に位置しており,交通利便性の観点で優れていることがわかる。
Fig. 4に生物応用化学科における卒業研究における共同研究の比率の推移を示した。2000年から順調に比率は増加していたが,公立研究所と行政機関との共同研究を加えた2007 (平成19)年度から,50%を超え,2008(平成21)年度まで60%超を維持している。
専攻科における取り組みは,Fig.
5に示すように, 2006(平成18)年度から増加しており,物質工学専攻における専攻科研究における共同研究の割合は2008(19年度)年度に40%となり,本科の卒業研究への共同研究の取り込みを追いかけるように増加しており,2009(平成21)年度には,共同研究比率50%を達成した。これにより,本取り組みは,専攻科(物質工学専攻)へと波及しており,専攻科への拡充は達成されたといえる。
生物応用化学科(本科,専攻科)における2007(平成19)年度の卒業研究,専攻科研究の分類としては,地域企業と実施する共同研究が,おおむね1/4を占めており,地域研究所,行政機関と続いている。地域企業,地域研究所,行政機関を合計すると本科,専攻科ともほぼ半分の割合を占めており,地域の高専としての役割が果たされているといえる。それぞれの共同研究先別の割合を,Fig. 6から11に示した。2007年以降共同研究先の割合に大きな変化はない。
一方,他学科への波及は,Fig. 1の対企業との共同研究件数にも表れているとおり,件数は大幅に増えていない。学科長委員会や教員会議で,校長,教務主事によって,その都度奨励されていたが,劇的な増加は達成できなかった。しかしながら,Fig. 1に見られるように,材料工学科や機械工学科では共同研究件数を大幅に増やしている学科もあり今後の展開が期待される。
共同研究に至る前段階として技術相談があり,この統計を押さえておくことは重要である。産学民連携推進センターでは,これまで各学科に任されていた技術相談について一元管理することとし,技術相談内容の報告を義務づけ,2008(平成20)年度から件数を学科別に集計している。Fig.
12,13に,それぞれ2008(平成20)年度,2009(平成21)年度(4〜2月)の技術相談件数を示した。この結果から明らかなように,共同研究に至る前段階である技術相談件数は増加してきており,今後共同研究の芽につながっていく可能性が高い。2007(平成19)年度以前の,技術相談の集計は記録していなかったが,年間数件であったといわれている。本取組で他学科への共同研究による学生の実践的技術者育成を奨励する方法として,産学民連携推進センターで技術相談の受付窓口を一元化し,商工会議所などを通して外部に宣伝した結果奨励と記録の集計を2008年度から始めたものである。今後の共同研究の増加につながる技術相談も多く寄せられており,共同研究の増加が期待できる。
Fig. 14に,生物応用化学科の平成16年度からの教育研究に関する経費の推移を示した。独立行政法人高専機構に配分された予算は,各高専に配分され,各高専で基盤経費が除かれた後,各学科に配分されている。2004(平成16)年度から学科に配分される教育研究経費は減少を続け,2008(平成20)年度には,550万円となっている。この金額は,学生実験などの共通経費を除くと各研究室あたり30万円の経費となり,外部資金の導入無しには,満足のいく卒業研究が行えないレベルにある。幸い,共同研究の増加とともに,共同研究費,奨学寄付金が増加しており,年間で1500万円のレベルを維持できるようになっている。
本取組が終了する平成22年3月以降に,GPの取組の継続が,資金面から懸念されるところであるが,上記のように外部資金を獲得する仕組みが出来上がっており,今後,外部機関と共同研究を卒業研究として実施していく取組のための資金に関して,心配はないといえる。
共同研究を卒業研究や専攻科研究として実施することに対する意識を,共同研究先,教員,学生に対してインタビューすることにより探った。
インタビュー結果より,共同研究を卒業研究として実施することにより,学生,教員ともポテンシャルが上がっていることがうかがえる。また,共同研究先の企業からの評価では,うまく納期とレベルを調整することにより,卒業研究として実施可能であることがわかった。共同研究先の公的研機関からは,高専の研究レベルに懸念が示されており,今後の改善が求められる。しかし,共同研究を卒業研究として実施していくことは,実践的技術者を育てていく手法として有効であるといえる。
インタビューは,地域の共同研究先の企業,公立研究所の担当者および久留米高専生物応用化学科の教員,生物応用化学科,専攻科の学生を対象に実施した。当初は,アンケート形式で集計する予定であったが,コーディネータノーの実際に面談して聞き取り調査をしたいとの強い要望により本調査方法が採用された。そのため,統計的に正確な比較が出来ない部分が多いところがあるが,より実態に肉薄した調査結果が得られたと考えている。
インタビューの質問項目は以下の通りである。
Q 1.高専はシキイが高いですか。高専との共同研究にはどういう問題がありますか。
Q 2.共同研究を卒業研究としたこと、あるいはすることに対してどう思われますか
Q 3.共同研究のスケジュールは立ててありますか。どの程度の割合で高専と打ち合わせする機会を設けてありますか。
Q 4.共同研究に対して、実行能力が高いですか、低いですか。予想通りの成果が得られていますか。
Q 5.共同研究の費用は、10万円以内、10万円〜50万円、50万円〜200万円、200万以上、高いですか、安いですか。
Q 6.共同研究の期間は、1ヶ月〜6ヶ月、6ヶ月〜1年、1年以上、短いですか、長いですか。
Q 7.共同研究は、商品化研究、基礎研究、応用研究 ですか。
Q 8.共同研究の成果の取り扱いは、マル秘、学内発表、学外発表、特許化 ですか。
Q 9.共同研究の場所が御社の場合、教員や学生の通勤方法と費用はありますか。
Q 10.共同研究する場合の安全対策 (装置に手足を挟まれたり、物が落下したりなどに対して、安全メガネ、安全靴、ヘルメット、マスク等着用)は、どのようにしてありますか。
Q 11.使用したい機器がありますか。
Q 12.その他何かありますか。
次頁以降に,インタビュー結果をグラフ化した。方策のところでも説明したとおり,結果については統計的に必ずしも正確でないが,傾向を明確に捕らえるのに,グラフ化は有効であると考えられる。
インタビューの質問項目は以下の通りである。インタビュー内容は,共同研究先に尋ねた項目と多くは重複している。
Q1.会社と共同研究することは教育研究活動(担任、クラブ顧問、学内役職、自主研究等)との兼ね合いで大きな負担となりますか。
Q2.共同研究の費用は、10万円以内、10万円〜50万円、50万円〜200万円、200万円以上、多いですか、少ないですか。
Q3.共同研究のスケジュールは立ててありますか。どの程度の割合で共同研究先と打ち合わせする機会を設けていますか。
Q4.共同研究の期間は、1ヶ月〜6ヶ月、6ヶ月〜1年、1年以上、 短いですか、長いですか。
Q5.共同研究は、商品化研究、基礎研究、応用研究 ですか。
Q6.共同研究の成果の取り扱いは、マル秘、学内発表、学外発表、特許化 ですか。
Q7.共同研究の場所は、学内、企業、公設試験研究機関か。学外の場合通勤方法と費用はどのようになっていますか。
Q8.共同研究の開始時期と卒業研究の開始時期がずれた場合はどうようにされましたか。教員のみによる研究とされましたか。共同研究先の方が参加されましたか、アルバイトを雇われましたか。
Q9.学生の卒業研究が開始されている場合、共同研究を卒業研究とした時期は、6月頃、夏休み前、夏休み明け、後期開始前、12月頃 ですか。
Q10.共同研究を卒業研究とすることは、学生の教育に有効であったと思われ
ますか。
Q11.学生等研究従事者へのアルバイト費用は(夏休み等休み期間中)どのようにして
ありますか。
Q12.使用したい機器がありますか。
Q13.その他何かありますか。
教員のインタビューについては,生データを示すと共に,インタビュー結果をグラフ化した。
Q1.会社と共同研究することは教育研究活動(担任、クラブ顧問、学内役職、自主研究等)との兼ね合いで大きな負担となりますか(15件)。
ある程度、少し、負担になる(6)、成果に対して負担になる(2)、あまり、特に負担にならない(7)
Q2.共同研究の費用は、10万円以内、10万円〜50万円、50万円〜200万円、200万円以上、多いですか、少ないですか(15件)。
10万円以内(2件)、10〜50万円(7件)、50〜200万円(5件)、200万円以上(1件)
Q3.共同研究のスケジュールは立ててありますか。どの程度の割合で共同研究先と打ち合わせする機会を設けていますか(15件)。
計画有り、月1回や1回程度(4) (この中にはメールや電話のほか年15回ほど
あっているとの回答あり)、2月に1回や1回程度(4) 、3月に1回程度(3)、半
年に1回(1)、1年に1回(1)、不定期で必要に応じて(1)、
Q4.共同研究の期間は、1ヶ月〜6ヶ月、6ヶ月〜1年、1年以上、 短いですか、長いですか(15件)。
6ケ月〜1年(10)、1年以上(5)
Q5.共同研究は、商品化研究、基礎研究、応用研究 ですか(15件)。複数回答1件有り
商品化研究(7)、基礎研究(6)、応用研究(3)、
Q6.共同研究の成果の取り扱いは、マル秘、学内発表、学外発表、特許化 ですか(15件)。 複数回答4件有り、回答なし3件
マル秘(4)、学内発表(4)、学外発表(4)、特許化(4)
Q7.共同研究の場所は、学内、企業、公設試験研究機関か。学外の場合通勤方法と費用はどのようになっていますか(15件)。
研究場所、学内で(5)、相手先で(1)、両方で(7)、その他
移動手段(負担)、自家用車やバイク(個人、7)、JR(個人、1)、出張(1)
Q8.共同研究の開始時期と卒業研究の開始時期がずれた場合はどうようにされましたか。教員のみによる研究とされましたか。共同研究先の方が参加されましたか、アルバイトを雇われましたか(15件)。
卒業研究で開始(5)、教員のみによる研究(5)、共研を実施しなかった(1)、共同研究先社員を参加させる(1)、学生の兼業として、卒研時に自分の研究として一緒にまとめてもらった(2)、委託研究である為、研究全体を学内のみで実施(1)
Q9.学生の卒業研究が開始されている場合、共同研究を卒業研究とした時期は、6月頃、夏休み前、夏休み明け、後期開始前、12月頃ですか(15件)。回答なし1件
6月頃(11)、夏休み前(1)、夏休み明け(2)
Q10.共同研究を卒業研究とすることは、学生の教育に有効であったと思われますか(15件)。回答なし1件
有効(14)
Q11.学生等研究従事者へのアルバイト費用は(夏休み等休み期間中)どのようにしてありますか(15件)。
特になし、なし(12)、夏休み期間中は6000円/日(1)、産総研の「研修」として
実施しており、基本的に無給(1)、人件費を経費として計上し、支給している(1)
Q12.使用したい機器がありますか(15件)。回答なし2件
あり(9) (オゾン発生器、加圧熱水装置、HPCL/MASS分析装置、オートグラフ、NC切削桟、分析用GC、微量サンプル分光光度計等)、なし(1)
Q13.その他何かありますか(15件)。回答なし5件
・
当初、農業試験場への研修という名目で、2名学生を派遣途中(12月)に、農業試験場・アイスマン・掘江本店との4者共同研究に移行中、共同研究契約書の内容につき問題が有り、県と機構間の調整が大変であった
・
産総研側は、学生のマンパワーを期待している。現在は、研修の名目で学生2名を派遣。
・
現在、客先のオートグラフを使用した試験は、客先社員に依頼。 本件3年間に恒る共同研究を実施し、本年は3年目に当る。
・
研究スケジュールを立てて、計画的な推進が図れるよう管理を徹底させたい。 学生の通勤負担を減らすべく、分析・実験作業の一部を学内で実施できるよう体制を整えたい。
・
地域企業からの課題解決型の共同研究の申込に対して教員のシーズが完全に一致することはまずない。教員のテーマが基礎的で、先端であればあるほど、さらに難しさが増す。高専を工業の高校として補え、論文とならないテーマを学生の教育(訓練)のために引き受けるかどうかの姿勢ないし、意識が久留米高専の工業高校としての方向性を出せるかどうかにかかっている。
・
バイオの先端研究は、世界の大学研究機関が鎬を削る分野であり、高専が参入するには、非常な困難が伴う。しかし、生物応用化学科は、バイオ分野への人材を育成しなければならず、思案のしどころであった。久留米近隣には、弥生時代の人骨が多数出土しており、考古学とバイオ分野の学際領域のテーマを地方自治体と設定することにより補助金が獲得できると考えた。
・
成果の出やすい研究テーマだとやりやすいが、出にくいとプレッシャーがきついと思う。ある程度、専門に近いところだといいと思う。
・
中小企業などが高専にて分析等を簡単に依頼できるように、機器類等を充実させる方が好ましいと考える。
・
共同研究を卒業研究の一環として行うことの教育上の効果は明らかである。 ただし、共同研究が5月以降にスタートした場合に対応が難しいのが難点であり、また、1月〜3月も忙しく新規共同研究計画を立案しづらい。
対象とした学生は,生物応用化学科(本科)5年生36名,専攻科(生物応用化学プログラムコース)1,2年の学生15名で,コーディネーターが直接インタビューした。
本科5年生については,共同研究を実施している学生30名と教員研究を実施している学生6名について分けて実施した。
Q 1.会社からの共同研究を卒業研究とすることに対してどう思うか。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思うか。
Q 3.共同研究先や学内で先生方や研究先社員と一緒に討論したり、プレゼンしたことがあるか。
Q 4.夏休み等休み期間中の通学方法と費用、あるいは通勤方法と費用はあるか。
Q 5.共同研究先での安全対策(安全メガネ、安全靴、ヘルメット等着用)は。
Q 6.その他
Q 1.会社からの共同研究を卒業研究とすることに対してどう思いますか。
・
会社を訪問したり、会社の人と話したりする機会が増えるのでためになる。
・
実際に社会を動かそうという観点に立てるので、貴重な経験になっている。
・
特になし
・
会社の人とやるという事で期日を守ったりと責任を感じるが、社会勉強になり、さらに自分の卒業研究の結果が社会に活かされることがとても嬉しく感じるので良かったと思う。
・
研究が実際に使われるのを見ることができるし、会社に入る事が出来るので新しい事に触れたりできて良いと思う。
・
特になし
・
自分が今まで勉強してきた事を社会でどのように活用していけるのかが分かるから、就職する前の心の準備が出来て良いと思う。
・
卒業前に企業の雰囲気に接する事が出来、学生にとって有意義と思う。
・
責任のあること
・
良いと思う
・
研究内容が将来性のある(実用化される)ものなので、やりがいがあってよいと思う。
・
生物系ではなく化学系のところ
・
会社ではどのような事をやるのかが分かるので、選んで良かった。
・
学校にいる時から会社の雰囲気が分かるのでよい。
・
自分の研究が製品開発の役に立つことがやりがいがあると感じます。ただ、企業とではなく自分の好きな研究テーマで実験をしたいとも感じます。
・
会社が実際にどんな研究をしているか、またどのような成果が欲しいかが分かるので、研究職の勉強になり良い事だと思う。
・
資金調達の方法として有効なやり方だと思う。
・
会社にとっても学生にとってもいいと思う。
・
より実用化を目指した研究が出来て有意義だと思う。
・
学校内のみでは知り合えない企業の考え方など参考になる事が多い。
・
共同研究ではないので、分からない。
・
学校では使えない実験器具が使えたり、とても実践的なことができるので、良いことだと思う。
・
いい取り組みだと思う。
・
先生からの薦め。
・
責任を感じる やりがいがある。
・
何を目指しているか明確に理解できる点(自分の研究が産業的に何らかの役に立つこと)では、非常に良いと思う。
・
普段は意識していない。少し役に立てるかもと思うと楽しい。
・
授業を通して有機化学が好きになり、中でも合成を行っている研究室に入りたかったので、ここにした。さらに、ナノに興味があったので、そういう研究を石井先生が行っているみたいだったので、それも決め手になった。
・
自分が行っている研究を責任を持って行わないといけない。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思いますか。
・
研究内容が明確で分かりやすい。結果が良ければ、実用化される可能性もあるので、やっていておもしろい。
・
いろいろな意見や話が聞けるので、視野の広い研究が出来る。
・
実用化を目指しているので具体性があって分かりやすい。
・
報告書の提出など大変な事は多いが、学校にはないものを見れるし、それに関わる事が出来て、とても良い事だと思う。
・
社会に出ていくにあたって、会社の中で過ごす事は、様々な面で役に立つと思う。
・
社会の風を感じれていいことだと思う。
・
化学・生物らしいことはしていないが、楽しいし、やりがいがある。
・ 企業は、利潤を目的とし、工業・商業・特許化にシビアだと思う。
・
特になし
・
変わらないと思う。
・
良いことだと思う やりがいがあり、意欲が湧く。
・ やりがいはあるが、内容が難しい。学校で出来ない事が不便だと思う。
・
あまり先生がうるさく言わないので、やりやすい。
・ 実際、反応させるだけで結果などは会社の方が出してくれるので他の研究班がNMRなどとっているのを聞くと、こんなに簡単でいいのかなと思う。
・ 他の卒業研究は失敗しても、自分が困るだけだが、共同研究だと企業の人にも迷惑をかけるので責任が重くなる。
・ 自分のペースだけではできないところが少し大変だと思いますが、自分の研究が形になっていくところは面白いと思います。
・ 実験の種類が多いので、他の所よりも使用する器具が多いと思う。また、完全な実験方法が分かっていない部分もあるので、色々と考える部分も多いと思う。
・ 今年から始まった研究なので、器具や研究場所に色々不自由している。
・ なし、・なし
・ 自分一人だけの問題ではなくなるため、より責任を感じる事が出来る。
・ あまり変わらない。
・ 企業の人と共同の方が、時間も早めにしないと迷惑になるので、てきぱきやることができて、良いと思う。
・ 他の研究にも良さはあると思うが、会社との共同研究の方が、より一層責任や、やりがいがあって、自分の力になると思う。
・ 合成と生分解実験といろいろ出来て楽しい。
・ 特に違いはないと思う。
・ 前述の内容の点で、他の共同研究と比較してよいと思う。ただ、サンプル提出が求められるなどの点で、負担になることは、面倒。
・ 私は、同じ卒研の人の共同研究ではない人と比べて変わらない。
・ やる事が多くて大変だけど、その分学ぶことも多くてよかった。
・ やりがいがある。
Q 3.共同研究先や学内で先生方や共同研究先の方と一緒に討論したり、プレゼンをしたことがありますか
・
学校で共同研究先の方と打合せをしたり、研究の途中経過を報告したりしている
・
ある、・ある、・ない、・ない、・ない、・ある、・ない、
・
学内にいるメンバーでは一度行った
・
討論を数回
・
〆切等の厳密な決まりがあり、気が引き締められてよいと思う。
・ 研究の進度の報告はある。 4〜5回
・ なし、・なし
・ 共同研究先で、現存の進行状況を報告した。
・ ある
・ 中島研究室と合同で中間発表会が1回、12月に笈木研究室のメンバーで中間発表会があった。
・ なし、・なし、・なし
・ 試験結果等を報告書という形で提出。
・ 分からない時に質問する程度。
・ ある
・
討論はしたことがある。プレゼンはしたことはないが、進み具合をまとめた報告書は作成したことがある。
・
なし
・
ある
・
共同研究の相手が遠方であるので指導教官がメールのやり取りをしている
・
ない
・
ない
・
毎週、今週行った事を報告し合い、年に数回、中間報告会がある。
・
毎週末ゼミを行ったり、中間発表を行っている。
Q 4.夏休み等休み期間中の通学方法と費用、あるいは通勤方法と費用はありますか。
・
電車、自転車、 費用、
・
バイク、費用なし
・
ある
・
通学方法、自費、 通勤方法、先生や共同研究先の方が車を出してくれる
・
ない、・ない、・ない
・
原付バイク
・
ない、・ない、・ない
・
交通費が自費な上に交通の便が悪い。
・
ない、・ない、
・
車、電車、バス
・
ない、・なし
・
休み期間中も通学時と同様に、原付もしくは自転車で自宅から通学している。費用は、ガソリン代くらい。
・
基本的に交通手段は、定期券を購入し使っているので、特別かかる費用はない。
・
なし、・なし
・
自転車
・
自家用車で家から30分
・
電車と自転車、費用は自腹だった。
・
車
・
時々
・
平日と変わらない。
・
夏休みは研究していない。
・
学校だったのでない。
・
何日間かあったが、実験で行けなかった。
・
電車の定期があるので、それを使っている。
Q 5.共同研究先での安全対策(安全メガネ、安全靴、ヘルメット等着用)は、ありますか。
・
ない、・ある、・ある、・ない、・ない、・ない、・ない
・
防護メガネ、手袋、白衣
・
ない、・手袋はしている、・ある
・
特に危険なものを扱ってはいないので安全対策は必要ない。
・
メガネ、手袋
・
安全メガネはあるが、マスクはない。
・
ない、・特にない、・
・
研究室のみでの研究の為、特にない。
・
安全メガネ、・安全メガネ、・安全メガネ
・
特に対策が必要な事はない。
・
ある、・特にない
・
共同研究で実験したことがない。
・
なし
・
手袋・メガネの着用あり。
・
使用する試薬や溶媒によって手袋や保護メガネを付け。
・
共同研究先が遠方のため、行ったことがない。
・
学校だった。
・
ある
・
メガネやマスクなどを着用している。
Q 6.その他何かありますか。
・
なし、・なし、・なし、・特になし、・ない、・ない
・
線香の卒研は化学・生物とどう関係があるのか聞かれた事があったが、全く答えられず、また、何の為にこの実験をやっているのか分からなく、一度やる気をなくしてしまったが、冨岡先生がその答えを見つけ教えてくれて、今は、何の為にこの実験をやっているのか分かるようになってきたので、楽しい。
・
共同研究相手として、企業は、学生としても社会を学ぶ上で有益であり、授業とは違う緊張感を持てると思う。
・
なし、・なし、・なし、・特になし
・
社会にでる前に、共同研究という形で仕事みたいにやってみるのは、良いことだと思う。会社に研究内容を報告して、それで開発中の製品や企画に直接関われたら、とてもやりがいを感じられると思う。
・
交通費の補助が学校から出ればよいと思う。
・
特になし、・特になし、・なし
・
Q2でも記入しましたが、実験の種類が多く、様々な器具を使うため、他の研究室の器材を借りている場合もあるので、少し不便を感じる事がある。
・
特になし、・特になし、・なし、・なし、・なし、・なし、・なし、・特になし、・なし、・なし
・
特になし
・
全く相手の会社の人との接触はなかったが、作った物質を誰かも見たり、調べたりしていると思うと少し楽しい。
・
なし、・なし、・なし
Q 1.卒業研究(研究題目)をどのようにして決められましたか。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思うか。
Q 3.卒業研究に関して報告したり、討論やプレゼンをしたことがありますか。
Q 4.夏休み等休み期間中も卒業研究をしてありますか。
Q 1.卒業研究(研究題目)をどのようにして決められましたか。
・
有機化学の反応機構に興味をもっており、その事を先生に話すと先生からテーマが与えられた。
・ 有機化学や遺伝子工学など難しい勉強が苦手だったから。
・
選択した研究室で扱っているテーマの中から興味のあるものを選べた。経路や、側鎖・手法の改良等は相談。
・
過去の研究内容を基に。
・
去年先輩がやっていたものの続き。
・
高分子について勉強したかった。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思いますか。
・ 合成系の研究のように反応が何ステップもあるわけではないので、やり直しが何度でも出来る点は良いところだと思う。
・ 確実に実験の結果が出るところが良いと思う。
・ 本格的な有機合成であり、測定等にも時間がかかるため、朝も一番早く、夜も一番遅い。ゼミのレベルが高い。
・ 実験操作は比較的簡単。
・
ゆっくり成長する食物の観察なのでおもしろい。
・
時間がかかる。
Q 3.卒業研究に関して報告したり、討論やプレゼンをしたことがありますか。
・
先生から研究に関係のある英文の冊子を配られ、それをパワーポイントを用いてプレゼンを行ったことがある。
・
前期終了後などで区切って報告会を行った。
・
中間報告会×2 、持ち回りの文献セミナー、 週間報告会。
・
入社試験で概要を簡単に説明したことはある。
・
ある。大阪の学会に行ってきました。
・
中間報告書を作成した。
Q 4.夏休み等休み期間中も卒業研究をしてありますか。
・ 夏休みは行ったが、冬休みは行わなかった。
・
休み期間、研究は行わなかった。
・
今年は、受験が終わるまで、休みを頂いた。
Q 1.会社からの共同研究を卒業研究とすることに対してどう思うか。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思うか。
Q 3.共同研究先や学内で先生方や研究先社員と一緒に討論したり、プレゼンしたことがあるか。
Q 4.夏休み等休み期間中の通学方法と費用、あるいは通勤方法と費用はあるか。
Q 5.共同研究先での安全対策(安全メガネ、安全靴、ヘルメット等着用)は。
Q 6.その他
Q 1.会社からの共同研究を卒業研究とすることに対してどう思うか。
・
学校以外の方と話すことが出来て勉強になると思う。
・
将来会社で働く為に、勉強しているから、良い経験になるのでいいことだと思う。
・
共同研究ではなかったが、卒業研究全体のバリエーションに幅が出て良いのではないかと思う
・
やりがいを感じて楽しそうだと思う。テーマも具体的で、結果がすぐ出るものが多いので、モチベーションの維持がしやすい。
・
良いと思います。自分の研究成果が製品となるため、責任が大きくやりがいを感じます。
・
実際の商品への応用されるかもしれない研究をできることは、良いことだと思う。
・
先生からのすすめ。
・
社会とのつながりが見えて、いいと思う。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思うか。
・
学校でする以上に自覚が必要だと思う。
・
実際に企業で研究できるので、将来のためになる。
・
学内に無い分野の研究テーマや設備を扱える点が良いと思う。
・
共同研究だからといって、一般の卒研と大きく異なっているとは思わない。卒研でも共同研究でも同じように取り組む。
・
化学の研究で、ポリイミドの重合及び、フィルム化をまず目標としている。研究が進んでいるかいないか、ハッキリ感じられ、目的物ができたときはうれしいです。
・
より現実的だと思う。
・
合成と生分解実験といろいろできて楽しい。
・
相手によっては、期限があるので、緊張感があっていいと思います。
Q 3.共同研究先や学内で先生方や研究先社員と一緒に討論したり、プレゼンしたことがあるか。
・
ある、・ある、
・
2ヶ月に1回程、実験の進歩の報告や、今後の計画作成など行っている。
・
ない
・
共同研究をしたことがないので、共同研究先と討論などしたことはない。先生との討論やプレゼンは、昨年の大岡研で何度も行った。共同研究を行っていたら、共同研究先と討論、プレゼンは行うべきだと思うが、場所は学校がいいと思う。その方が学生へのプレッシャーが少ないので。
・
ないです。卒業論文や学会発表、特許等行いました。
・
研究室の先生や同じ研究をしている研究室の人とは研究について話している(直接、研究先と話したりしない)。
・
ある(若手ポスター)
・
ありません
Q 4.夏休み等休み期間中の通学方法と費用、あるいは通勤方法と費用はあるか。
・
車で通っているが費用は自費である。
・
自家用車で通っているが交通費が自己負担なので厳しい
・
JR鳥栖駅から徒歩で30分弱
・
特別な理由がない限りは自分の車を使う、コストはガソリン代。
・
ありません。西鉄電車の定期券で来ています。
・
研究は学校の研究室でなので、通学方法等は、学校がある日と同じ(自動車)。
・
ときどきしていた。
・
原付で通学している。
Q 5.共同研究先での安全対策(安全メガネ、安全靴、ヘルメット等着用)は。
・
ある、・ある
・
実験時は、白衣、保護メガネ及びマスクを着用するようになっている。
・
共同研究の経験がないのでわからない。仮にそういう立場になって、具体的な安全対策を言われたら従うと思う。
・
研究室内では、着用を義務付けられている。安全メガネ、適切な靴、白衣。
・
研究室では、メガネ着用を行っています。
・
手袋、メガネの着用あり。
・
共同研究先に行ったことがない。
Q 6.その他
・
なし、・なし、・なし、
・
個人的な見解ですが、共同研究は各研究室に最低1テーマずつある方がいいと思う
・
なし
・
共同研究先からのプリンタ等の提供や薬品の提供は、とても助り、研究が行えます。
・
なし、・なし
Q 1.会社からの共同研究を卒業研究とすることに対してどう思うか。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思うか。
Q 3.共同研究先や学内で先生方や研究先社員と一緒に討論したり、プレゼンしたことがあるか。
Q 4.夏休み等休み期間中の通学方法と費用、あるいは通勤方法と費用はあるか。
Q 5.共同研究先での安全対策(安全メガネ、安全靴、ヘルメット等着用)は。
Q 6.その他
Q 1.会社からの共同研究を卒業研究とすることに対してどう思うか。
・
不斉反応に興味があったり、不斉触媒を合成すると言っていたのでためになると思う。
・
会社での報告会など、普通の卒業研究では経験できないことをすることができるので良いと思う。
・
短い期間で行うことは、少し難しいと感じた。就職活動、進学などもあるので、1人で行うことは難しいと感じた。
・
会社が抱えている問題について知ることができ、その要求に応えていくという点で、 とても力を付けさせてもらった。
・ よいと思う。学内だけではできないことも、会社の施設や援助によって可能になることもあるし、学生にとっては社会勉強にもなると思う。
・
やりがいがあり、面白そう。
・
有機合成の分野に興味を持ったところから。
Q 2.他の卒業研究と比較してどう思うか。
・ なし
・ 自分の思っている通りに進められない
・ 実験の目的と背景が具体的であると思う。
・ 他の卒業研究と比べると目的観があっていいと思う。
・ 共同でやっている、自分に任されている仕事があるという感覚があるので、自分だけ
・ で行う卒業研究よりも、責任感や、使命感が強いと思う。また、自分だけでは気がつかなかったり、解決できないことも、先方のノウハウや意見によって違う視点から見れたり、改善したりするので、大変心強くもありました。
・ やりがいがある。責任感を感じる。
・ 工業的価値が高いことが自分にとって分かり易く、やりがいがある。学校でする以上に自覚が必要だと思う。
Q 3.共同研究先や学内で先生方や研究先社員と一緒に討論したり、プレゼンしたことがあるか。
・ 中間報告等を行いました。
・ 実験報告を行った。
・
実験を行う際に、先生と討論した。共同研究先の方とは、都合が合わなかった為、行っていない。
・
報告会に参加したが、知識のない人に話す大変さを学んだ。
・
実験データやそれらをまとめた報告書を電子メールで送信し、意見を聞いたり、今後の方針を一緒に考えたりした。また、夏休みを利用して、実験材料を取りに行ったり、実験方法を習ったりした。
・
ない
・
学会でのポスター発表・学校での卒論発表をした。
Q 4.夏休み等休み期間中の通学方法と費用、あるいは通勤方法と費用はあるか。
・ 専攻科1、2年共に夏休みにも実験を行った
・ なし
・ 電車、バス、自己負担
・ 主に原付バイク、電車 、その費用は、通学にかかる費用と同じ。
・ ありましたが、向こうから研究費として出してもらいました。
・ ない
・ 土・日・祝日以外はしていた。
Q 5.共同研究先での安全対策(安全メガネ、安全靴、ヘルメット等着用)は。
・ 安全メガネを着用している 手が荒れる人は手袋もしている。
・ なし
・ 有害物質を取り扱う場合、手袋等をつける。
・ 常に安全について指導があった。
・
白衣、ゴム手袋、保護メガネ、危険な試薬についての説明があった。
・ ない
・
着用するよう指導されている。
Q 6.その他
・ なし、・なし、・なし、
・ 共同研究を通して、時間を有効に使い、効率よく作業する必要性を学ぶ事が出来た。コスト感覚も少しは身に付いたと思う。
・ 大変勉強になりました。
・ ゴム分解菌を見付けるところは、共同研究だったと聞いているが、私が関わった実験では、ほとんど共同研究ではなかった。
・ 高額な試薬を使えば、容易と考えられる合成方法があっても、使えるお金に、かなりの制限がある。
高専において企業等との共同教育は、従来から本学4年生時の1週間程度の短期インターンシップと専攻科2年生の2、3ヶ月の長期インターンシップが行われてきました。長期インターンシップの場合、個々の学生に対して企業の方がかなり様々な機会を設けてコミニューケーションを図り実務教育を行っているようですので、かなり効果が上がっていると思います。
今回の現代GPにおける卒業研究、専攻科研究を通しての共同教育は、半年以上の、また、長い場合には2年以上にわたる場合もあり、研究を基にして専門的な実験手法や技術の習得が効果的にでき、学生にとって将来社会に出て職業についた時に役立つと考えます。
共同教育がうまく機能してゆくために、また、教育効果をあげるためには、次のようなことを常に行ってゆく必要があります。
まず、共同研究を開始する時に卒業研究を通して学生を共同教育する旨を共同研究担当者に伝え、具体的にどのような形で行うかを話し合っておく必要があります。また、研究の進捗状況の打ち合せ等が、大体2、3か月に一度行われるようですので、このときに学生を出席させ、出来れば報告や発表する機会を常に作り出し、共同研究担当者と学生とが顔を合わせる必要があります。研究先で実験などを行う時には、安全対策にはかなり気づかわれていますが、研究先までの通勤時の安全や費用に対して十分考慮しておく必要があります。
教員にとって、共同研究が負担にならないように、費用としては、10〜50万円で、高専を中心に研究を行う。また、2、3か月に一度の研究等の打ち合わせを行い、1年以上の基礎研究や応用研究を行うことが良いと思います。
·
共同研究を卒業研究として実施することにより,学生,教員ともポテンシャルが上がっている
·
共同研究の納期とレベルを調整することにより,卒業研究として実施可能である(地域企業)
·
高専の研究レベルに懸念が示されており,今後の改善が求められる(公的研機関)
·
共同研究を卒業研究として実施していくこと(本取り組み)は,実践的技術者を育てていく手法として有効
·
高専が共同研究をする用意があることを,もっと広報していく必要があると指摘されており,シーズ集の作成を含めて,今後の産学民連携推進センターの活動の拡充が望まれる。
平成20年度までに,産学民連携推進センターにおいて全国高専のシーズ集を調査し,そのシーズ集の特徴を調べ効果的なシーズ集のあり方を検討してきたことはすでに報告した。その結果を踏まえて,平成21年4月から,久留米高専全教員のシーズが掲載された,久留米高専シーズ集の作成に取りかかり,同年12月に印刷製本が完了した。
さらに,そのシーズ集には,教員の研究紹介のシーズのみならず,過去に取り組んだ事例を掲載することとした。さらに,高専が所有している,共同研究に有用と考えられる分析・測定機器の紹介もできるだけ掲載することとした。
平成20年12月に実施された,本取り組みの評価委員会の中間評価でも,商工会議所や市役所を通じて,もっと積極的に広報活動に努めるように指摘されており,本年3月までに,商工会議所や鳥栖,久留米市役所を通じて配布を完了した。
1
函館高専地域共同テクノセンター 研究シーズ集 地域貢献
函館高専の持つ技術と手法
研究シーズ集 地域貢献 函館高専の持つ技術と手法 平成17年10月発行
研究シーズ集 地域貢献を目指して 平成15年10月発行
表紙デザイン、表紙裏白紙
、1頁センター長「――地域貢献に向けて」、2頁研究シーズ集内容、3頁学科−研究分野マトリックス表(1頁)教員姓と頁、4頁シーズの育成(2頁)、5頁学外と学内共同研究助成(3頁)、6頁から平成17年度学内共同研究(4頁)、10頁校長・研究シーズ紹介(8,9頁)、12頁から研究分野別教員及び技術室の研究等紹介(顔写真入、10−105頁)、利用名可能な分析・計測機器一覧(106−118頁)民間との共同研究(119−128頁)、裏表紙前白紙、裏表紙お問い合わせ先
2 苫小牧高専研究シーズ集 2007年度版
表紙デザイン、表紙裏表紙説明、1頁目次、2頁白紙、3頁校長「はじめに」、4頁分野と学科の対応教員氏名、5頁オーダーメイド研究開発の立ち上げ、6頁白紙、7頁から12頁学生参画型研究のご紹介(文科省現代GP採択事業)、13頁から16頁校長・産学官連携コーディネーター研究シーズ(1,2頁)、17頁から教員分野毎及び技術系職員研究内容等紹介(キーワード、顔写真入)(3−92頁)、付録地域共同研究センター施設・研究設備のご紹介(2頁分)、教職員検索(2頁分)、研究キーワード検索(5頁分)、裏表紙前白紙、裏表紙デザイン、発行・編集
3 釧路高専 教官シーズ集 釧路高専はやります 昭和14年10月発行
表紙デザイン、表紙裏白紙
1頁校長「はじめに」、2頁白紙、3頁目次、4頁校長研究等紹介(キーワード、顔写真入)、5頁から各学科教員研究等紹介(キーワード、顔写真入)(2−70頁)、付録協力のしくみ(72−74頁)、キーワードインデックス(五十音順)、裏表紙前編集・発行、裏表紙白紙
5 八戸高専 シーズ集 専門分野・研究課題一覧 2006年度発行
表紙デザイン、表紙裏白紙
1頁校長「シーズと産のニーズのマッチングを目指す」2頁白紙、3頁目次学科毎教員氏名、4頁白紙、5頁から各学科教員研究等紹介(キーワード、顔写真入)(1−58頁)、裏表紙前白紙、裏表紙デザイン
9 秋田高専 研究シーズ集 2005年発行
表紙デザイン、表紙裏
目次、1頁校長「ごあいさつ」、2頁発行によせてセンター長、3頁研究室紹介、4頁から上下2段各学科教員の研究等紹介(顔写真入、技術相談に応じられるキーワード)、39頁から学科横型プロジェクト研究紹介、47頁から設備紹介(テクノラボ)、55頁から主要設備紹介(各学科等)、63頁から外部資金受入制度の概要施設概要アクセス、裏表紙前白紙、裏表紙デザイン
10 鶴岡高専 研究総覧シーズとニーズ2003 平成15年9月発行
表紙デザイン、表紙裏白紙、1頁刊行にあたって校長、3頁目次、4頁研究推進機構5頁シーズとニーズ:機械・エネルギー系、7頁から各教員シーズとシーズ等紹介(3〜162頁、1人2頁、顔写真入、研究領域のキーワード)、付録・郊外用開放研究教育機器・設備等(163頁から)、研究協力の手引きと手続き(219頁から)、運営協議会規程(225頁から)、テクノセンター規程(227頁から)、技術振興会規約(230頁から234頁)、235頁編集発行、裏表紙前白紙 裏表紙白紙
14 群馬高専シーズ集 専門分野・研究課題一覧 平成19年10月発行
表紙デザイン、表紙裏白紙、1頁シーズ集(第5号)発行によせて 地域共同技術開発センター長、2頁白紙、3頁目次、4頁氏名索引、6頁専門分野索引、8頁から研究課題索引、12頁から各学科2頁づつ教員紹介(1〜14頁、顔写真入)、(15頁共同研究・受託研究制度のしくみ、申込書)、裏表紙前連絡先、裏表紙デザイン
23
岐阜高専教育・研究紹介 2003年12月発行
表紙デザイン研究成果写真等 表紙裏 表紙図や写真の説明、校長「ごあいさつ」科学技術相談室長「発刊にあたり」の後、12頁までに「学校組織」「科学技術相談室」「産官学連携のしくみ」がある。13頁シーズ集表紙、15頁から各学科教員の研究等紹介(1頁、顔写真入、キーワード)、教室系技術職員系(1頁2名、顔写真入、キーワード)及び技術教育係(2頁5名、顔写真入、キーワード)、103頁に索引(教官・技官名、キーワード)、109頁に各種申込書がある。裏表紙発行者
30
奈良高専研究シーズ集 平成18年10月発行
表紙同高写真、表紙裏Contents、1頁本シーズ集使い方、2頁巻頭挨拶、3頁奈良高専の紹介、4頁カテゴリー検索表(教員名と頁)、6頁分類ワード検索、10頁キーワード検索、14頁研究者一覧、15頁からカテゴリー別教員研究紹介(アイウエオ順顔写真無)、95頁研究協力のしくみ、裏表紙前頁 学校までの地図とアクセス等、裏表紙 Contentsと連絡先
31
和歌山高専 教員シーズ集 平成19年8月発行 横書
表紙同高専写真、表紙裏白紙、1頁シーズ集発行にあたって 地域共同テクノセンター長、2頁白紙、3頁から各学科教員研究テーマと頁、6頁白紙、7頁から各頁2人づつ教員シーズ紹介(2頁1枚1〜63頁、顔写真入)、(64頁研究協力・技術相談などの手続き)裏表紙前頁白紙、裏表紙 共同テクノセンター写真と連絡先
34
津山高専 シーズ集 第1号 平成14年12月発行
表紙白紙に上記文字、表紙裏白紙 1頁出版に際して校長、2頁相談対応分野3頁から(1〜66頁)教員研究と相談対応分野紹介(顔写真入、相談対応キーワード)、裏表紙前後白紙
38 宇部高専 研究シーズ集 2006年3月発行
表紙デザイン、表紙裏白紙 1頁学科組織産学連携制度紹介、2頁産学連携取り組み例、3頁目次各学科教員名と頁、4頁発刊にあたって校長、5頁から(1〜77頁)教員研究紹介(顔写真入、相談分野)、(78頁編集後記)、(79頁氏名索引)(80頁発行日、発行関連)、裏表紙前白紙、裏表紙デザイン
40 阿南高専 研究シーズ集 2007年12月発行
表紙デザイン、表紙裏白紙 1頁発刊にあたってテクノセンター長、5頁教員名簿(頁無)、8頁から(1〜67頁)教員研究等紹介(顔写真入、技術相談キーワード、メッセージ)、(68頁寄附講座)、(71頁キーワード索引)、(77頁教員索引)、裏表紙前白紙、裏表紙デザイン
53 都城高専 研究内容紹介 2006年4月発行
表紙デザイン、表紙裏白紙 1頁巻頭言校長、3頁目次、4頁センター設立目的(1頁)、5頁各学科教員名と研究キーワード(3頁)、9頁から(5〜65頁)教員研究等紹介(顔写真入、キーワード、技術シーズ等)、(66頁キーワード索引編集後記)、(68頁発行日、発行関連)、裏表紙前白紙、裏表紙デザイン
54 鹿児島高専 地域共同テクノセンター広報誌 研究シーズ集 平成19年11月発行
表紙高専写真、表紙裏広報誌目次(1−24) 25頁研究シーズ表紙、26頁研究シーズ、教員氏名と頁、27頁から(1〜58頁)各学科教員及び技術室職員の研究等紹介(キーワード、顔写真入)、裏表紙高専のマップ、裏表紙デザインと発行日と高専連絡先
◆研究者の紹介は肩書きを付けずに紹介し,研究者データを出来るだけ平易に解説し,研究分野キーワードを附記した。
◆過去に共同研究を実施したことのある教員には,研究シーズのページで実例を載せてもらった。
◆巻末には,主な分析装置を研究機材データとして紹介いている。
○目標2
使用頻度が高くかつ共同研究に有効な共通機器(マイクロスコープ,レーザー顕微鏡,HPLC,RT-PCRなど)を総合試作技術教育センターに整備し,広く共同研究に供し,学生教育の質を今日の技術レベルとする。
◎シナリオ・主要な手立て
平成19年度
デジタルマイクロスコープ(キーエンス,VHX-900 SP1584),DNA増幅分析装置一式[リアルタイムPCR装置(ロッシュ・ダイアグノスティック,ST300),PCR装置(TaKaRa)他]を導入。
平成20年度
走査型共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3100) 一式
平成21年度
テンシロン万能試験機
超微量DNA濃度測定装置(ナノドロップ)
◆マイクロスコープ
デジタルマイクロスコープ(キーエンス,VHX-900 SP1584)
本設備備品は,選定事業における地域企業,研究機関,行政機関との共同研究遂行(23件の卒業研究テーマ)に係る実験を行うことを目的として,卒業研究の授業において,学生が観察の実験を行うとともに,画像解析を行うものである。当初計画したとおり、選定事業における地域企業との共同研究テーマによる卒業研究の実施,地域研究機関との共同研究テーマ(ナノテク)による卒業研究の実施,行政機関との共同研究テーマ(弥生人骨DNA解析)による卒業研究の実施において使用している。
◆DNA増幅分析装置
·
リアルタイムPCR装置 1台 (ロッシュ・ダイアグノスティック,ST300)
·
PCR装置 2台
·
(TaKaRa,Thermal Cycler Dice
Gradent,
TP600)
·
(TaKaRa,Thermal Cycler Dice
Gradent,
TP650)
·
ゲル撮影装置 1台 (アムズシステムサイエンス,STAGE-1000BGR)
·
殺菌装置 1台 (BIO-LINK,クロスリンカー)
·
クリーンベンチ 2台 (三洋電機,MCV-711ATS)
本設備備品は,選定事業における行政機関との共同研究テーマに係る弥生人骨DNA解析を行うことを目的として,卒業研究の授業において,学生が実験を行うものである。当初計画したとおり、行政機関との共同研究テーマ(弥生人骨DNA解析)による卒業研究の実施における,DNA抽出,精製,解析に使用している。
◆走査型共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3100) 一式
本設備備品は,選定事業における地域企業,研究機関,行政機関との共同研究遂行(20件の卒業研究テーマと7件の専攻科研究論文のテーマ)に係る実験を行うことを目的として,卒業研究および専攻科研究論文の授業において,学生が10,000倍以上の高倍率で工業製品,人骨,植物体,微生物のミクロンオーダーの観察実験を行うとともに,画像解析を行うものである。
◆テンシロン万能試験機
本設備備品は,選定事業における地域企業,研究機関,行政機関との共同研究遂行(20件の卒業研究テーマと7件の専攻科研究論文のテーマ)に係る実験を行うことを目的として,卒業研究及び専攻科研究論文の実験において,学生がゴムの強度試験,線香の強度試験,果樹袋の強度試験などの測定を行うものである。
◆超微量DNA濃度測定装置
本設備備品は,選定事業における地域企業,研究機関,行政機関との共同研究遂行(20件の卒業研究テーマと7件の専攻科研究論文のテーマ)に係る実験を行うことを目的として,卒業研究及び専攻科研究論文の実験において,DNA濃度,試料の濃度などの測定を行うものである。
平成21年度を見る限り,ほぼ毎日の卒業研究に利用されているのに加え,生物化学系の学生実験(生物工学実験,生物化学実験)に活用され,利用頻度の予想を大きく上回った。
当初計画では,テンシロン万能試験機,超微量DNA濃度測定装置ではなくHPLCを導入予定であったが,既にHPLCの設備は,生物応用化学科において,3セット導入済みであり,設備機器の重複導入は認められていないことや,2008年度に実施された中間評価の指摘として,生物応用化学科で共同研究実施に有用な機器を導入するべきであるとされたことより,本選定に至った。
以上,導入された分析期類は,シーズ集の研究機材データにおいて紹介され,将来の共同研究での利用に供されている。
○目標3
海外技術者育成機関の視察をおこない,比較検討することにより次世代工業技術者育成の方策を検討する。
◎シナリオ・主要な手立て
海外の技術学校を訪問調査する。
コミュニティーカレッジ,リサーチトライアングル,大塚製薬アメリカ研究所(アメリカ),TAFE(オーストラリア),ポリテク(シンガポール),ファッハホッホシューレ(ドイツ),INSA(フランス),ポリテク(イギリス),工業学校(中華人民共和国)
(1)平成19年9月17〜25日 生物応用化学科 森 哲夫
米国コミュニティーカレッジ(アメリカのオハイオ州)
l
l Lorain County Community College,
l University of Akron のPolymer
Engineering Center
l Bridgestone Americas Center
for Research and Technology
(2)平成19年12月8〜17日 生物応用化学科 森 哲夫
オーストラリアの公立専門学校(TAFE)
西オーストラリア州 パース近郊
l
l Challenger TAFE
l Swan TAFE
(3)平成20年1月11〜12日 一般科目理科 中坊滋一
シンガポール共和国のPolytechnic
l
l Temasek
l Republic
上記3校は,九州・沖縄地区の高専と包括的交流協定(MOU)を一昨年結んでいる。
(4)実施期間:平成20年2月17日〜23日 生物応用化学科 渡邊 勝宏
ドイツ・フランス
バーデン=ヴュルテンベルク州ウルムにあるFachhochschule Ulm
レンヌにある INSA Rennes(INSA:Institut National
des Sciences Appliquées)
(5)平成20年2月20日〜21日 機械工学科 中尾 哲也
イギリス
l
l
(6)平成20年5月10〜16日 生物応用化学科 伊藤 義文
中華人民共和国
l
承徳石油高等専科学校
l
第1回中日高専学校教育フォーラムに参加
(7)平成21年11月28〜12月8日 生物応用化学科 冨岡寛治,一般文科 金城博之
アメリカ合衆国
l
l
l
Otsuka
l
NIH
1) 先進国工業国は,大学の年限とほぼ並行して公立の専門学校を持っている.(日本の高専は,後期中等教育を含んでいることが特長であるといえる.)
2) 専門学校の分野は,工学,経営,芸術など様々なジャンルが用意され実学である。教育内容は,実践的で職業訓練の側面が大きい.
3) オーストラリア,シンガポールにおいて,学位[diplomaまたはcertificate(bachelorより下位に位置)]を取得できる
4) 英国,ドイツ,フランスにおいては,Bachelor,Masterの学位が取得できる
5) アメリカでは,大学の最初の2年と重複するコミュニティーカレッジでは,工場労働力の養成が主な目的であるが,ある程度の学生が,大学に編入している。このコミュニティーカレッジへは,無試験で入学することができ,授業料も大学と比べて圧倒的に安価である。竹中平蔵元大臣は,このシステムをして学歴の再チャレンジのシステムと評している。
専門学校のうち工業学校に関しては,地域との連携が密で多額の資金を受け入れている。
セントルイスの,コミュニティーカレッジでは,地域のバイオベンチャーと連携して,ベンチャー企業のためのバイオテクニシャン養成を始めている。またノースカロライナのリサーチとラーアングルでは,23のコミュニティーカレッジが連携して,モンサント社の援助により,バイオテクニシャントレーニングセンターを運営し,リサーチトライアングル内の企業にWorkforceを供給している。
学校の規模が大きく,その数も圧倒的に多い.
工業学校の知名度が高い
世界の工業学校間の交流の動きがある
@大学との差別化が必要
A日本の高度成長期を支えるために促成人材養成をしたが,転換を求められている
Bグローバル化低成長時代を迎え,高専のアイデンティティーが求められている
対立軸の取り方に,異論はあるかもしれないが,大学,大学院,専門学校(職業養成学校),工業高校と違うポジションを確立しなければならない。
【添付資料】
アメリカコミュニティーカレッジの訪問調査報告 Page 85
オーストラリアTAFEの訪問調査報告 Page 91
シンガポール視察_中坊報告書 Page 95
「ドイツ・フランスにおける工業教育調査」実施報告書 Page 107
イギリスにおける工業教育調査報告書 Page 115
中国技術学校報告書 Page 123
○目標4
協働セミナー,講演会,講習会を開催する。
◎シナリオ・主要な手立て
共同研究で学生が直面する課題(技術者倫理,バイオ研究と倫理問題,工場生産管理,労務に関する問題)についてのセミナーを2回/年開催した。
講演の詳細は以下の通り。
1.講師:佐田洋一郎山口大学教授 知的財産本部長
2.講演題目:「技術者・研究者が知っておきたい特許取得のノウハウと取扱い」
3.開催日時:平成19年9月26日(水)15:00〜17:00
4.場所:D1教室(100人収容)
5.対象者: (1)本科5年生、専攻科生(先端工学特論)
(2)久留米高専教職員
(3)久留米地域企業関係者(久留米市商工労働部新産業創出支援課に依頼)
6.参加人数:61名
1.講師:稲津 康弘 農研機構 食品総合研究所 主任研究員 食品安全研究領域 食品衛生ユニット
2.講演題目:「この食べ物は安全?〜『食の安全』についてどう考えるか」
3.開催日時:平成20年2月19日(火) 午前10時〜
4.場所:D1教室(100人収容)
5.対象者: (1)本科5年生、専攻科生(先端工学特論)
(2)久留米高専教職員
(3)久留米地域企業関係者(久留米市商工労働部新産業創出支援課に依頼)
6.備考: 講演終了後、農林水産消費安全技術センター(福岡市)見学(希望者のみ)
7.参加人数:63名
1.講師1:河合秀樹 室蘭工業大学 工学部 機械システム工学科 教授
2.講師2:三好浩稔 筑波大学 大学院人間総合科学研究科 基礎医学系医工学 講師
3.講演題目1:工業技術者の倫理とは 〜 室蘭工業大学特色GPの取組み
4.講演題目2:バイオ人工臓器の開発 〜 臨床応用に向けての倫理も含めて
5.開催日時:平成20年7月4日(金) 13:15 〜16:00
6.場所:D1教室(100人収容)
7.対象者: (1)本科5年生、専攻科生(先端工学特論)
(2)久留米高専教職員
(3)久留米地域企業関係者(久留米市商工労働部新産業創出支援課に依頼)
8.参加人数:94名
1.講師1:内田 由理子 詫間電波工業高等専門学校 准教授
2.講師2:土持 由希子 株式会社 東和コーポレーション 研究部
3.講師3:田中 日美子 P&G R&D/Fabric & Home Care
4.講演題目:女性技術者のキャリア形成〜 10年後の働く私がイメージできますか?
5.開催日時:平成20年12月10日(水) 13:15 〜16:00
6.場所:D1教室(100人収容)
7.対象者: (1)本科5年生、専攻科生(先端工学特論)
(2)久留米高専教職員
(3)久留米地域企業関係者(久留米市商工労働部新産業創出支援課に依頼)
8.参加人数:48名
1.講師:福浦義彦 株式会社富士通九州システムズ 顧問 社会保険労務士
2.講演題目:企業の求める人材像
3.開催日時:平成21年5月15日(金) 15:00 〜16:30
4.場所:D1教室(100人収容)
5.対象者: (1)本科5年生、専攻科生(先端工学特論)
(2)久留米高専教職員
(3)久留米地域企業関係者(久留米市商工労働部新産業創出支援課に依頼)
8.参加人数:100名
久留米高専では、平成19年度に選定された現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)の産学民連携教育による実践的技術者育成事業の一環として、第5回産学民協働セミナーを5月15日に開催した。今回は企業の求める人材像をテーマに株式会社富士通九州システムズ顧問の福浦義彦氏を講師として迎え、企業が本当に求めている学生の姿についての講演が行われた。講演では、就職活動を間近に控えた5年生を中心に100名以上の学生が詰め掛け、不況で就職難が叫ばれる昨今、企業側の視点から見た採用に対する考え方や学生に対する要望などについて熱心に耳を傾け、また講演後の質疑では、学生から採用試験のポイントや就職後の仕事に対する姿勢や考え方などについて多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われた。
1.講師1:Dr Estibaliz Aldecoa-otalora Astarloa King's College London, Research Facilities and Units
2.講師2:舟橋京子 博士 九州大学総合研究博物館 特別研究員(RPD)
3.講演題目:Using Bones and DNA to solve the Ancient Mysteries
4.開催日時:平成21年10月9日(金) 15:00 〜17:00
5.場所:D1教室(100人収容)
6.対象者: (1)本科5年生、専攻科生(先端工学特論)
(2)久留米高専教職員
(3)久留米地域企業関係者(久留米市商工労働部新産業創出支援課に依頼)
8.参加人数:45名
久留米高専では、平成19年度に選定された現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)「産学民連携共同教育による実践的技術者育成」の一環として、第6回産学民協働セミナーを10月9日に開催した。今回は「古代人骨は語る〜スペインと日本女性考古学者の挑戦〜」と題し、イギリスはキングズ・カレッジ・ロンドンからエスティバルス アルデコア オタロラ 氏を招き「バスク地方における銅石器時代住民の古代DNA研究」及び、九州大学総合研究博物館特別研究員 舟橋京子氏から「古人骨資料に基づく先史社会復元〜列島縄文社会を対象として〜」というテーマで古代人の生活習慣や社会環境、親族関係および集団関係等を人骨のDNAを用いて解明する研究について講演がおこなわれた。
普段、高専ではあまり触れることがない「考古学」という分野の講演に、参加した学生・教職員は、興味深い趣で聞き入っていた。
○目標5
工業教育などの雑誌に得られた成果について投稿し,評価を受けるとともに本取組のモデルを外部に発信する。
外部発表
(1) 2008年1月26〜27日
第13回高専シンポジウム in Kurume
久留米市石橋文化センター 知的財産・特許相談室においてポスター展示
(2) 2008年2月9〜10日
平成19年度「大学教育改革プログラム合同フォーラム」
パシフィコ横浜 会議センターにおいてポスター発表
(3) 2008年3月24〜25日
九州沖縄地区高専工学教育研究集会
熊本電波高専 くぬぎ会館第一研修室
【要旨集有り】
(4) 2008年8月20〜21日
第6回全国高専テクノフォーラムパネル討論
クレイトンベイホテル(広島県呉)
(5) 2008年9月
久留米工業専門学校紀要 第24巻第1号
「ドイツ・フランスにおける工業教育調査」〜ファッハホッホシューレ(独)・グランゼコール(仏)に学ぶ
渡邊勝宏
(6) 2008年11月28日
産学連携教育フォーラム in 一関
講演とパネルディスカッション
(7) 2008年12月6日
第18回九州沖縄地区高専フォーラム
ポスター発表
(8) 2009年12月15日
熊本高専発ワークショップ イノベーションをリードする
パネル展示ブース発表
(9) 2010年1月8日
大学教育改革プログラム合同フォーラム
東京ビックサイトにて,ポスター発表
本取組の中間段階と終了時に、本事業に対する取組みの進捗状況、教育効果等を評価し、今後の活動計画、当該取組みの質の向上又は改善に結びつけるために現代GP評価委員会を設置し、各分野の有識者の意見をお願いした。
委嘱した現代GP評価委員は以下の通りである。
久留米商工会議所 専務理事 |
古賀 義幸 |
葛v留米リサーチ・パーク 常務取締役 バイオ事業部長 |
大田 修明 (黒木 重則 代理) |
産総研 九州センター 所長代理 |
犬養 吉成 |
福岡県工業技術センター 所長 |
倉田 奈津子 (鍛治茂樹 代理) |
久留米市 企画調整部企画調整課長 (現職 子育て支援部長 ) |
奈良ア 洋治 |
鳥栖市 総務部総合政策課 課長 |
石橋 哲文 |
日 時 平成20年12月12日(金) 13時10分〜15時10分
会 場 久留米工業高等専門学校 小会議室
出席者 評価委員会委員
大田 修明(株式会社久留米リサーチ・パーク バイオ事業部長)、
田中 一裕(産業技術総合研究所九州センターものづくり基盤技術支援室長)、鍛冶茂樹(福岡県工業技術センター生物食品研究所機能材料課長)、奈良崎洋治(久留米市企画財政部 企画調整課長)、
古賀 義幸(久留米商工会議所専務理事)
本 校
前田 校長、馬越 教務主事、伊藤 産学民連携推進センター長、
冨岡 教授(生物応用化学科)、藤
コーディネーター、
井上 事務部長、伊藤 総務課長
1 校長挨拶
議事に先立ち、前田校長から挨拶があり、高専の教育研究の現状、今後の地域連携強化等への取組みについて報告があった。
2 出席者紹介
馬越教務主事から、評価委員会委員、本校関係者について紹介があった。
3 委員長の選出
馬越教務主事から、評価委員会の委員長の選出について諮られ、大田 修明 株式会社久留米リサーチ・パーク バイオ事業部長を選出し、本委員会の進行をお願いした。
4.現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)の概要説明について
伊藤教授から、資料に基づき、文部科学省の現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)に採択された「産学民連携共同教育による実践的技術者育成」の実施概要について報告があり、地域連携による共同教育のコンセプト、目的、実施計画等に関する説明があった。
5.現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)の平成19年及び20年度の実施結果報告について(中間報告)
冨岡教授から、資料及プロジェクターに基づき、平成19年及び20年度における現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)の実施状況について報告があり、地域企業等との共同研究による卒業研究の実施状況、機器整備、海外技術者育成機関の視察、協働セミナー開催、学外への情報発信等について説明があった。なお、引き続き、大要次のような意見交換があった。
・ 生物応用化学科から、他学科への共同研究での卒業研究拡充についての取組みとして、何か方策を立てたのか。
・ 生物応用化学科の取組みでの具体的な経験等をモデルとして、他学科への拡充を進めることとしている。
・ 高専の良さや企業への共同研究の紹介などについて、ホームページ等を活用した情報発信を強化する必要がある。また、各教員の研究概要などが外部からはよく見えない。
・ 企業との共同研究を促進するためのパンフレットは、作成していないのか。
・ ホームページ等の充実、共同研究等に関するパンフレットの作成を考えたい。各教員の研究概要については、既存の研究者総覧の整備を検討している。
6.現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)の平成21年度の実施計画について
冨岡教授から、資料及プロジェクターに基づき、平成21年度の現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)の実施計画について報告があり、共同研究による卒業研究としての実施の有効性、コーディネーターによる共同研究と卒業研究とのアレンジマップ作成、GPフォーラムの開催、現代GPの取組み対する評価外部評価委員会の対応等について説明後、大要次のような意見交換があった。
・ 今回の報告では、企業、公的研究所に関する共同研究等の成果が見えづらい。
・ 企業等との共同研究において、学生が従事すると特許の関係での対応等についての課題がある。企業の状況を考慮のうえ検討したい。
・ 地域が、教育GPなどの学生の教育に対して、どのような手伝いができるのか。学生への支援策、課題、実施に伴う効果について、意見や改善点をお願いしたい。
・ 今後、本校は産学民連携推進センターを整備の上、地域との交流を活発にするとともに周辺地域の協力を得て技術者育成に努めたい。
以上のような意見交換後、本プログラムの取組み進捗状況(目標1〜5)に対する評価とコメントについて、各委員へ提出を依頼することとした。また、その他の項目を加えて広く意見を求める。なお、冨岡教授から、各委員へ提出様式を電子データで送信し、提出期限は1月末とした。
以上
日 時 平成22年1月15日(金) 13時30分〜15時35分
会 場 久留米工業高等専門学校 小会議室
出席者 評価委員会委員
犬養 産業技術総合研究所九州センター所長代理、鍛治 福岡県工業技術センター生物食品研究所機能材料課長、奈良崎 久留米市部長、古賀 久留米商工会議所専務理事、黒木 株式会社リサーチ・パーク研究開発部長、石橋 鳥栖市総務部総合政策課長
本 校
前田校長、馬越教務主事、伊藤生物応用化学科長、冨岡教授(生物応用化学科)、藤コーディネーター、井上事務部長、浦口総務課長
1 校長挨拶
議事に先立ち、前田校長から挨拶があった。
2 出席者紹介
馬越教務主事から、評価委員会委員、本校担当者について紹介があった。
3 委員長の選出
馬越教務主事から評価委員会の委員長の選出について諮られ、犬養 産業技術総合研究所九州センター所長代理を選出した。
4 現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)の概要説明
伊藤生物応用化学科長から資料に基づき、採択時から最終年度である平成21年度までの概要説明があった。
5 現代的教育ニーズ取組み支援プログラム(現代GP)の実施結果報告について
(最終報告)
冨岡教授から資料及びプロジェクター等を用いて平成21年度の実施結果、最終報告があり、その後意見交換を行った。
6 その他
以上のような意見交換後、本プログラムの取組み状況に対する最終評価とコメントを各委員に提出をお願いした。なお、冨岡教授から提出様式を電子データで各委員に送信し、2月上旬を提出期限とした。
また、3月15日(月)に現代GP成果報告会を開催することについて報告した。
本取組の報告会を,2010年3月15日(月)に実施した。2009(平成21)年度には,産学民テクノセンターが予算化され,2010年3月に竣工したため,竣工記念式典を前半に,本取組の成果報告会を後半におこなった。成果報告会後にその報告を踏まえて,「産学共同教育の充実について」のテーマでパネルディスカッションを実施した。外部から80名,学内から40名,合計120名の参加者があった。
第2部 現代GP成果報告会の様子
15:50〜16:20 成果報告「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)成果報告」
(事業名称:産学民連携共同教育による実践的技術者育成)
久留米工業高等専門学校 生物応用化学科 教授 冨岡 寛治
16:20〜17:20 パネルディスカッション「産学連携共同教育の充実について」
パネリスト
一関工業高等専門学校 顧問 嘱託教授 菅野 昭吉 氏
久留米市役所 商工労働部 新産業創出支援課 課長 野上 禎英 氏
福岡県工業技術センター 生物食品研究所 所長 倉田 奈津子氏
株式会社テクノ月星 代表取締役社長 井上 定男 氏
久留米工業高等専門学校 教務主事 馬越 幹男
久留米工業高等専門学校 生物応用化学科 教授 伊藤 義文
モデレーター
久留米工業高等専門学校 生物応用化学科 教授 冨岡 寛治
左から,菅野,馬越,伊藤の各氏
左から,北村,井上,倉田の各氏
(1)
今後の予定
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久留米工業高等専門学校 産学民連携推進センター報(研究者データ,研究シーズ,研究機材データ)の配布と共同研究・技術相談の広報(コーディネーター)
·
本取組のホームページへのアップ
·
本取組の報告会の実施(3月15日(月)産学民連携テクノセンター開設記念と同時開催)
(2)
産学民連携推進センターによる本取組後の活動
·
産学協働セミナー(7回以降)の継続開催
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共同研究の立ち上げ(生物応用化学科以外への学科の展開)
·
久留米工業高等専門学校 産学民連携推進センター報(研究者データ,研究シーズ,研究機材データを含む)の活用
生物応用化学科教授 森 哲夫
1.オハイオ州の産業、大学などの現状
五大湖に接したミシガン州(自動車の街:デトロイトがある)、オハイオ州〔自動車タイヤの街:アクロン、鉄の町:クリーブランドがある〕、ミシガン州(鉄鋼の街:ピッツバーグがある)は、スノーベルトと呼ばれ、アメリカにおける製造業の中心地であった。特にアクロンはグッドイヤー、ファイヤストン、グッドリッチなどが集中し、タイヤの街であった。
しかし、1980年以降にはアクロンのタイヤ製造工場はすべてアメリカ南部に移り、地域経済は低迷したが、大学(アクロン大学やケースウエスタンリザーブ大学など)・企業(グッドイヤーやブリヂストンなどの研究所)・地域(オハイオ州、カウンティ)が連携して、「ゴムの街」から熱可塑性エラストマー・高付加価値ポリマーなどの「ポリマーの街」へと変身し、復活しつつある。自動車生産工場も増えている。
そのため従来の製造現場で働く労働者よりも、高度の技術教育を受けた人材が必要となっている。
また、オハイオ州知事の教育方針が、大学への進学率の向上を大きな教育方針としていることもあり、高等教育機関の重要性が高くなっている。
2.訪問先:アメリカ合衆国オハイオ州の大学、コミュニティーカレッジ、企業など。
オハイオ州には、州立大学(4年制)が13、大学の地域キャンパス(2年制)が25、コミュニティカレッジ(2年制)が28ある。
今回は、州立大学のAkron大学、大学地域キャンパスのKent State Univ. Stark Campus, コミュニティーカレッジのLorain County Community College, および地元企業のBridgestone/Firestone本社と研究所、およびGoodyear
World of Rubber (博物館)を訪問した。
午前中に大学・コミュニティーカレッジのスタッフ((Dean, 教務、国際交流、学科の教授など)3~6名とのミーティング、午後はキャンパスツアーを組んでいただいた。
全ての大学、会社において、担当者と交換したメールが面会した方々に配布されており、それに従ってミーティングは進められた。
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面会 |
ミーティング時間 |
キャンパスツアー |
Community
College |
Dean
Dr.Lopez-Molina Dr.
Remmert 理事 Ms. Everett 技術・教育部長 Professor
3名 |
10:00〜 12:00 |
13〜 15:30 |
Kent
State Univ. Stark |
Biasella理事 Speck理事 Paveloni
副理事 |
10:00〜 12:00 |
|
Polymer
Engineering |
Dr. K. Min Dr. T. Kyu Dr. J. White |
14:00〜 15:00 |
15:00〜 16:00 |
Bridgestone/Firestone Center for Research &
Technology |
本社のRoach理事と大橋氏 荒木研究所所長と Dr.Poulton |
9〜10:30 |
10:40〜 12:00 |
Goodyear
World of Rubber |
* 世界で最も大きなゴム関連の博物館 |
|
見学 13〜 14:30 |
@ Lorain County Community College。
基本的に希望する学生は、全部受け入れており、半分くらいが修了する。
学生数は2,000人程度。実習設備がよく整っている。
基礎的な学習と技術的なトレーニングからなる。
1. 教育プログラムの多様性:80の教育プログラム、
・ 2年間で修了(准学士)したのち、大学へ編入できる。
経済的な負担が少ない、入りやすい
・ 3年間C.Cで勉強し大学に単位も取得し、大学に編入することができる(大学は1年間で修了できる)
・ 8つの大学とのpartnershipを提携している
2. 高校生へのPR
・ 高校に在学しながらコミュニティーカレッジの単位を取得(無料)でき、入学後単位を認めるEarly College High School があり、など入学しやすい制度を設けている。
3. 地域との連携
・ 地域の企業から多くの基金を提供してもらい、最新の機器を購入している。学生や地域企業の技術者の技術トレーニングに利用
・ 州・企業からの基金を、授業料の免除、教科書代、大学の講義受講料などにも使用
・ インターンシップ
・ 地域住民の技術力のレベルアップ
Lorain County Community Collegeの制御関係実習室
A
ケント州立大学の地域キャンパスで2年制。准学士、学士、修士の学位を取得できるプログラムあり。Starkの学生はほとんどが大学編入を目指している。
高校卒の23%しか大学等に進学していないので、進学率を上げたいとの州の方針が有るとのこと。
工場での労働者の必要数が減少し、高度の技術を持つ技術者が必要になっている。
1.282のプログラム
2.高校生が無料で受講できるコース
3.大学へ直接行かなくても、学士を取れるシステム〔経済的な面でメリット〕
4.周辺のカレッジや大学との連携が非常に密だが、会社とはあまりない。
5.6つの地域キャンパスにそれぞれ特徴がある。
B
アクロン大学ポリマーエンジニアリングの研究室を訪問した。ゴムに関する研究からポリマーとくに機能性ポリマー全般にわたる研究に広がっている。ポリマーサイエンスとポリマーエンジニアリング部門があるアクロン大学のほかグッドイヤーとブリジストンの研究所もあり、アクロンは工業教育の裾野を広げ、企業工員の再教育も行っている。
大学も特徴(ポリマー、液晶、医療、・・)を出さないと生き残れず、オハイオ州の大学でも同じ学科の統廃合も現実味を帯びてきているとのこと。大学で資格を取れる制度の確立、単位修得の柔軟性などが必要とのお話。
Akron 大学の Polymer Engineering Academic Center
C Bridgestone/Firestone
タイヤ工場はアメリカ南部に移り、現在アクロンには430名の技術者がいるが、大学卒が主で、准学士は30名程度。
1. 地域貢献を重要視し、「草の根運動」を展開しており毎年、20万ドルを使っている。
種々の運動基金の提供、各種ボランティア活動
2.教育、健康、文化などへの基金
3.Bridgestone Americas Center for Research
and Technologyの見学
研究所には50名の研究員(半分はphD)新しいポリマーの開発、物性、加工部門あり。全米の大学の著名な教授5名とのコンサルタント契約あり。大学教授によるシリーズものの講義、ミーティングがたくさん企画されている。大学を訪問してのリクルーティング。学会や講演会のサポート。インターンシップ受け入れている。
アクロンにあるBridgestone/Firestone 社
生物応用化学科教授 森 哲夫
1.オーストラリアの教育制度の調査概要
オーストラリアでは日本の小学校に相当するPrimary
School (1~6学年)、中学校に相当するJunior
Secondary School(7~10学年)、高等学校に相当するSenior
Secondary School(11,12学年)があり、10学年までは義務教育でです。10学年を修了すると、大学に進む為の準備としてのSenior Secondary Schoolに進む生徒、TAFE(Technical And Further Education)とよばれる専門学校に進む生徒、および就職する生徒に分かれる。
大学は全オーストラリアに39校あり、一つを除き全て国公立の総合大学で多くの分野でアカデミックな研究がなされている。TAFEは州政府により運営されている高等教育機関であるが、大学との違いは「より実践的な知識と技術の養成、すぐに就職に結びつく職業訓練」を目的としており、「研究」に重きを置く大学とは大きく異なる。資料によれば全オーストラリアに約200校ある。
分野として工学・情報・農学・環境学・鉱山・自動車・建築学・デザイン・芸術・音楽や演劇・スポーツ・観光・ビジネス・社会福祉・調理・ナチュラルセラピー・航空関係など非常に広範囲にわたる。どのTAFEにも共通したコースを持っているので各TAFE間の競争は厳しが、鉱山関係に強いTAFE,アート関係ならわがTAFE,羊毛工業関連ならばオーストラリアで一番というように特徴・得意分野を強調して生き残りの努力をしている。
地域の産業界・商業界・職業団体と密接に連携しているし、地域により差はあるがJunior Secondary School 修了生の40〜70%がTAFEに進学するとのことであり、全オーストラリアで認知されている教育機関であると実感した。
TAFEでは、技術や知識を修得した証明としてのDiploma(3年程度)、Associate
Diploma(1.5年~2年程度)、CertificateT・U・V・W(2年〜6ヶ月)、を取得できる。さらに高等教育としてのAssociate Degree, Bachelor Degreeなども認定できるようなコースもあるとの説明があった。これらの資格はオーストラリア政府が認定したAustralian Qualifications Framework(オーストラリア教育資格システム)で認定されたものであり、どこのTAFEで取得としても別の大学やTAFEでも認定・互換されるので、大学を含めた進学やレベルアップの就職のために非常に役立つとのことでした。
TAFEにおける教育の特徴はプログラムの多様性と実施の柔軟性であり、産業界との深い結びつきにより先端の職業訓練をおこなっていることである。
2.訪問先
教育システムが日本の高等専門学校に近いTAFEを訪問し、工業教育への取り組みや地域連携などについて調査した。
西オーストラリア州で最大の都市であるパース近郊にあるCentral TAFE, Challenger TAFE およびSwan TAFE を訪問した。
TAFE |
面 会 |
TAFE概要・訪問キャンパス |
Central |
Jan Tekely
Director
International Market Development David Zanich
Learning Portfolio Manager Engineering |
100年の歴史、4つのメインキャンパスあり、学生数約25,000名で15歳から60歳まで。 約1000名のスタッフ。 約200のコース。修理用語は99%が就職、1%が大学進学。 e-Centralキャンパスとtraining
Centreの一つを訪問した。 |
Challenger |
Margaret Gannaway
Director
Information Technology & Business Skills Centre Kerry Bowe
Director
Horticulture & Environmental Science Skills Centre |
7つのキャンパス、11のtraining
Centre。 30の領域で100以上のコース。 Murdoch キャンパス、WA
Horticulture &Environmental Science Skills Centreと Wool Technology Training Centre、を訪問した。 |
Swan |
Managing Director K. Tachi
International Business Development Consultant |
2003年に3つのTAFEが合併してできた。 6つのキャンパスあり。約1000名のスタッフ。約70のプログラムあり。33000名の学生。 全オーストラリアのトップ3に選ばれている。 Bentlyキャンパスを訪問した。 |
3.TAFEの特徴など
1.
修了したらすぐに役に立つ技術訓練、職業訓練
日本の各種専修学校、職業訓練校のプログラムに類似している。技術教育については、工業界との強い連携があり最新の機械・機器などがあり最先端技術教育をおこなっている。大学生がTAFEに来て訓練を受けることは普通におこなわれているし、既に仕事を持っている人がパートタイムの学生として夜間や空いた時間に訓練を受けるコースもある。プログラムを検討する州・TAFE・商業工業界からなる委員会があり、常にプログラムの改善に努めているとのこと。
本校でも大学・産業界の委員による外部評価が実施されているが委員会開催の頻度は検討すべきであろう。
2.
コースの多様性
訪問したどのTAFEにおいても100前後のコースがあり、学生が必要とする技術・能力を選べるようになっている。これには多くの経験豊かなスタッフが必要であるが、教員のほとんどが実務経験を持っている。
3.
Secondary
Schoolとの連携
Secondary School の生徒がTAFEで実習訓練を受けることができるし、TAFEでの初級の資格であるCertificateT、Uを取れる場合もあるとのことで、生徒は実習をとうしてTAFEをよく知ることができるし、TAFEへの進学に意欲を引き出す効果があると思われる。
本校の体験セミナーの充実は重要であろう。
4.
大学との連携
TAFEに在学しながら、連携している大学の単位を取得できる。オーストラリアではオーストラリア教育資格システム(Australia Qualifications Framework)によりどこの大学、TAFE,高校で取得した単位は相互に認定される。
高専でも大学との連携により大学単位を取得できるが、その単位を他の大学でも認定できる制度があればいいと思う。
5.
地域との連携
パートナーシップを地域団体と結び、ボランティア活動などを通して地域への貢献をしている。
6. 教員の訓練
TAFEの教員を会社に派遣することもある。本校では内地研究員・外地研究員、高専間教員交流はあるが、会社(研究所など)への短期・長期派遣も検討したらよいのではないだろうか。
Central TAFEのe-Central Campus
Challenger TAFEのWool Technology Centreの実習室
一般科目理科
中坊滋一
1. はじめに
平成20年1月11日および12日、シンガポール共和国のPolytechnic(以下,ポリテク)を視察した.ポリテクとは,日本の高等専門学校(以下,高専)に相当するといわれている国立の高等教育機関である.今回訪問したSingapore, Temasek, Republicポリテクの3校は,九州・沖縄地区の高専と包括的交流協定(MOU)を一昨年結んでおり,これまでにも多くの視察或いは交流が行われており、その報告も各所で目にすることができる.
2シンガポールの教育体制とポリテクニク
2.1複線型能力別教育制度
シンガポール政府は,人材が国家にとっての最大の資源であるという理念の下,工業化経済から知識型経済への転換を担う人材開発に近年最も重点を置いている.これは,国家予算の4分の1が人材開発費に当てられている(日本は1割程度)ことからも見て取れる.
その教育システムは非常に特徴的である.早い時期から細かくコース分けされた複線型の能力別教育制度である.図1にその概略を示す([1]).()内の数値は各学校の標準修業年限で,網掛け部分は,それぞれのコースが修了した時点で課される国家試験を示す.
Special
Course Express
Course |
Normal
Course |
Secondary
School (4) |
初等教育は6歳から始まり,6年間を Primary Schoolで学ぶが,5年生に入る時点で最初の能力別クラス分けがあり,卒業時にPSLE(Primary School Leaving Examination)という試験でSecondary Schoolのコースが決まる.Secondary Schoolの4または5年間を終了後,GCE(General Certification of Education)’O’レベルと呼ばれる試験を受け,その結果によってPre-University,ポリテク,ITE(技術教育研修所)が選択できる.Pre-Universityとは,大学進学のための準備教育機関で,現在は修業年限が2年のJunior Collegeが16校と修業年限3年のCentralized Instituteが1校存在する.ITEとは,職業訓練が主目的の技術学校で,事務,看護,建築,電気技術,コンピュータ技術,ビル管理などのコースを提供している.国内の大学は現在3校(国立2校,政府が出資する私立1校)のみであるが,そのレベルは非常に高い.また,海外の大学に進む者も多い.
2.2ポリテクニク
現在シンガポールには、Singapore, Ngee Ann, Temasek, Nanyang, Republicという5つのポリテクがある.昨年度(2006年度),5校合わせた全学生数は67,667人、教員数は3,736人([2])であった.中等教育課程を修了したGCE’O’レベル試験受験者の約40%がポリテクに進学している.その歴史は様々で,1954年にSingaporeポリテクが創設されたのが最も古く、その後順次一校ずつ開校し,最も新しいRepublicポリテクは2003年に開校したばかりである.
ポリテクの卒業生は,就職に有利な実践的なスキルとニューエコノミーに関する経験を身につけていることを期待されているが,ポリテクではいわゆる学位(Degree)は取得できない.ポリテクには専門化された数多くのコースがあり,コース修了時にDiplomaという資格を取得できる.それらの分野は非常に広範で,工学,経営,芸術などをはじめ様々なジャンル(教育省の資料によると、12の大分類の中に146のコースが挙げられている)をカバーしているが,4割近くを工学系の学生が占めている.各コースは,エンジニアリング(航空工学、土木工学、電気工学、機械工学、化学工学、生命科学)、ビジネス(経営学、会計学,観光、接客)、マスコミュニケーション(メディア、報道)、情報通信などという一般的な分野の中で特化或いは統合された専門分野であったり,特定のキャリアニーズに応える、海洋エンジニアリング、海洋学、看護学、幼児教育、映画,デザイン,図書館学、心臓技術、超音波検査、検眼、安全管理、保険、公共事業,調理などに関するコースも用意されている.コースの内容は時代のニーズに即し,絶えず新設されたり整理されたりしており、各校でコースの特色を出し競い合っている.
また,社会人の再教育やスキルアップのためのコースも多数用意され,パートタイムの受講も可能である.
ポリテクはシンガポールの人材開発において非常に重要な役割を果たしているといえる.
3. 視察日程と概要
平成20年1月11日
(1)Temasek
Polytecnic
時間:9:30~10:00
場所:Visitor Information Centre
応対者:J. Chanさん (Customer Service Assistant)
内容:キャンパス全体および歴史や表彰の説明を受ける。
時間:10:00~10:30
場所:International Relations & Industry Service Department
応対者:R. Ravindran さん(Senior Offisor/ International Relations & Industry Service Department)、Yong Fook Joo 先生(Deputy Director /Continuing Education, School of Engineering)
内容:シンガポールの教育システムとポリテクの教育や産学連携についての説明、質疑。
時間:10:30~11:15
場所:学内各所
応対者:Yong Fook Joo 先生
内容:Open House(オープン・キャンパス)見学。Project(卒業研究に相当)の成果発表がポスターセッション形式で行われている。熊本電波高専から留学している学生を紹介される。彼自身も研究内容を英語で紹介(移動通信機器を用いた医療現場との連携について)。企業との共同研究が多数見られる(なかでもPhilips社は多くのテーマのスポンサーになっているようである)。軍との共同開発(太陽電池?)もあり。
時間:11:15~12:30
場所:School of Engineering
応対者:Albert Wong Fook Sung先生 (Section Head/Mathematics Support Group)、
Lee Han Young 先生(Lecturer)、Yong Fook Joo先生
内容:School of Engineeringの数学スタッフとの面談。数学教育の内容や学生の理解度についての話題。
Visitor Information Centre
TemasekポリテクのOpen Houseの模様(右写真左側の学生が熊本電波高専からの留学生)
(2)Singapore Polytecnic
時間:14:30~15:00
場所:Department of Student & Alumni Affairs
応対者:Angelvin Chee Parma さん(Ag Manager/ Department of Student & Alumni Affairs)、Liew Beng Keong さん(Director/ Department of Student & Alumni Affairs)
内容:交換留学、学生の交流について(大分高専との実践事例の紹介)。
時間:15:00~16:15
場所:学内各所
応対者:Angelvin Chee Parma さん
内容:Open House(オープン・キャンパス)見学。バンド演奏や日本研究会などのイベントも多数。Secondary Schoolの生徒でごった返している。進路相談やそれぞれコース(Diploma)の紹介も学生やスタッフが個別に熱心に行っている。
時間:16:15~17:30
場所:Department of Mathematics & Science
応対者:Liao Kuo Tang 先生(Director/ Department of Mathematics & Science)、Chuah Bang Keat 先生(Section Head, Deputy Director / Department of Mathematics & Science)、Yeo Soo Ngoh先生(Depty Director/ Department of Mathematics & Science)、Chao Yunn Chyi先生(Depty Director/ Department of Mathematics & Science)、Angelvin Chee Parma さん
内容:数学スタッフとの面談。ITの活用、PBLについて。担当授業数、学生の理解度の話題等。
時間:17:30~18:30
場所:学内特設会場
応対者:Ong Tiong Hui さん(Manager/Continuing Education Center, Department of Industry Service)
内容:Project発表会場(SPINNOVEX2008)見学。Project(卒業研究に相当)の成果発表がポスターセッションと実演形式で行われている。企業との共同開発商品多数(食品、健康器具など)。本格的なロボットや遊技機のデモなども行われている。
時間:18:30~21:00
場所:学内ホール
応対者:Courvoisier Lucas Ng さん(Manager / Industry Service Centre)、Yap Chin Hua, John さん(Manager/ Technology Transfer Centre/Dept of Industry Service)、Yeow Kian Peng 副校長(Deputy Principal(Academic))、Edward Quah Kok Wah 副校長(Deputy Principal(Administration))、Keith Kee さん(General Manager /Rutledge E&P Pte Ltd)、他多数
内容:Industry Serviceのスタッフとの面会およびBanquet
“連携先企業探しの苦労”、“学生、教職員の相互交流の推進”、“企業へのスタッフ派遣・相互交流の実践例”、などの話題。印象的だったのは、学生(の受け入れや諸外国の大学との単位互換など)においても、スタッフ(の人事交流)においても、一律の方法ではなく、各ケースごとに細かく柔軟に条件を検討する姿勢で推進しているとのこと。(ただし、最低限の英語でのコミュニケーション能力は必須。サポートシステムは整備しているが。)国際交流事業に非常に意欲的な取り組みをおこなっていることを感じた。
Singaporeポリテクニク
SingaporeポリテクニクのOpen Houseの模様
平成20年1月12日
(3)Republic
Polytecnic
内容:事前に日程の調整がうまくいかず、当日は休業日であったため、校舎内外や図書館、屋外厚生施設などを見学。日本人建築家による設計だというそのキャンパスは、まだできたばかりで真新しく、広々としていてデザインも非常にモダンで素晴らしいの一言につきる。シンガポール政府の教育への力の入れ方の違いを思い知らされる一例だと実感する。当方の訪問目的に関連する資料は後日メールで送付してもらう。(当日図書館に預けてあったそうだが、連絡が行き違って受け取れなかった。)
(事前)応対者:Brian Chan さん(Manager(North Asia Operation)/Planning and International Operations)
Republicポリテクニク
4.ポリテクニク教育事情私感
4.1 連携・交流事業
ポリテクにおける「企業や地域との連携を教育へ生かす手法」を調査すること,が今回の視察の当初の主たる目的であった.このテーマの調査協力の依頼を受け,実際に応対してくれたスタッフが所属している部署は,ポリテクにより名称が異なり,
・International Relations & Industry Service Department
・Department of Student & Alumni Affairs
・Department of Industry Service
・Planning and International Operations
などであった.すなわち,国際交流と産学連携関係に携わる部門を含む部署である.まず驚かされたのは,これらの部署のスタッフが日本では考えられないほど質・量ともに充実していることであった.つまり,数十人単位のスタッフが専任でこの業務に当たり,高い学識と充分な経験を持つ者が少なからずいるということである.更に、それぞれのスタッフの対応が非常に丁寧で,手慣れている.一人の訪問者に対しても自校のアピールを意欲的かつ確実に伝達し,こちらからの質問・要求にも丁寧に対応する.訪問者の要望に合わせて最も適切な人材がスムーズに対応するように綿密な計画をたててエスコートされる.訪問前は,日本の高専との規模・施設の圧倒的な違いから,正直なところどれくらいまともに相手にされるのか不安を抱いていたが、冷遇されることは一度もなかった.
これは,連携・交流に関わる部署が非常に活発に機能しているということの証左であろう.実際,どのポリテクも多数の企業や研究機関さらには軍とも連携を保っており,学生、教職員の交流事業も教育・研究機関のみならず企業とも進められているという.
ポリテクが行っている連携・交流事業は,その対象も内容も非常に多岐にわたっている。そこには何か革新的なノウハウがあることを我々は期待するが,ある担当責任者曰く,「統一的な手法があるというより,柔軟にきめ細かに個別に対応する体制を整えている」とのことであった.それが学生であっても,教職員であっても,ケースバイケースのオーダーメイドの連携・交流事業を立案するというのである.高専が,同じレベルに到達する日が来ることはあるのだろうか.
シンガポールについて学ぶうちに,上記のような考え方は,シンガポールの国家政策そのものと似通っているようにも思えてきた.前述の教育システムも近年いくつもの点が変更されてきたものである.学校の統廃合も少なくない頻度で実施され,ポリテクにおいてもコースの新設や整理が社会情勢に即して頻繁に行われている.「方針は変えないが,方法は臨機応変に変えてよい.」シンガポール建国の父といわれるリー・クアンユー初代首相の理念がここにも生きているのだろうか.
広報活動
どのポリテクも広報活動には力を入れている.今回の訪問で最初に訪れたのは,TemasekポリテクのVisitor Information Centreであったが,ここでも専任のスタッフによる接待を受けた.学校の沿革・施設や表彰また各School(学科)紹介などは広いスペースにセンスよくディスプレイされている.これらについてもスタッフによる熱心な紹介があった.
訪問当日は,ちょうどTemasek,Singapore両校のOpen House(高専のオープン・キャンパスや体験セミナーに相当)が開催されており,学生獲得のための並々ならぬ努力の一端を垣間見ることができた.Open Houseは,完全にオープンなイベントであり,全国のSecondary Schoolの生徒が団体で大挙して訪れる.ポリテクによっては,広いキャンパス内のバスツアーが行われたりもする.例えれば,学園祭と高専シンポジウムと学校説明会を合わせたもの、いや明らかにそれ以上の盛況振りである.
メインは施設見学・授業体験,スタッフや学生による進路ガイダンス.進路を決めかねている生徒のために適性検査ができるPCが設置されていたりもする.卒業研究に相当する”Project”の研究発表がポスターセッション形式やデモンストレーションによって行われ,その会場はさながら企業主催の見本市のようである.さらには,バンド演奏や学生サークルによるイベントもありイベントを盛り上げている.
このような特別なイベント以外にも,日常的に,初等・中等学校の生徒,教員のためのプログラム,アクティビティが多数準備されており,学生獲得のために大きな役割を果たしていると思われる.
政府の力
どのポリテクでもその規模の大きさ,施設の質の高さに圧倒されるが、特に今回驚いたのは,Republicポリテクであった.2003年開校したばかりであるが,昨年現在の地に移転した。その規模と洗練されたデザイン(日本人の著名建築家による設計)のキャンパスには目を見張るばかりである.
前述のOpen Houseでは,見学に訪れるSecondary Schoolの生徒に,もれなくオリジナルのバッグや計算機など趣向をこらしたお土産が分厚い学校要覧やパンフレットとともに配られる.会場のディスプレイも本格的で,相当な資金が投入されていると思われる.
企業の協賛等もあると思われるが,当初から予算に組み込まれた潤沢な資金が準備されているとのことであった.
たった2つの例ではあるが,人材育成に力を注ぐ政府の施策の一端を目の当たりにし,ため息が出るばかりであった.
学力の二極化
ポリテクの教育といえば,技術・実学重視の職業教育であり,PBL,IT化というキーワードがしばしば聞こえてくるが,基礎科目についても高いレベルのカリキュラムが,必ずしもPBL,IT化という方法ではなく行われているということを今回初めて知った(ただし,Republicポリテクではすべての授業がPBLで行われているという).数学教員としての著者の立場から見る限り,少なくとも工学系のコースで教授される数学については日本の高専と同等かそれ以上である.教科書は各校各School(学科)の教員によるオリジナルのものを使用しているという.
一方で,これだけの恵まれた教育環境で学ぶ学生達にあっても,意外なことに,学力と学習意欲については日本同様二極化の傾向が強く現れているという.この現象は近年多くの国々で同様の傾向にあるそうで,ポリテクのある数学担当スタッフは,これぞまさにグローバリゼーションであると冗談交じりに嘆いておられたことが印象的である.
そのような背景もあり,授業の導入部には意欲を高めるための様々な工夫が研究されているという.そこではまさに,ITやPBLが活用されることがあるという.
5.おわりに
今回の訪問を機に,シンガポールについての文献を書籍やWebでいくつかあたってみることになった.近年のシンガポールの教育レベルの高さは有名で,何年も前から,多くの視察団がその教育システムの調査を行っている.そして,いずれの場合にも,異口同音,日本の教育への危機感が報告されている.
これまでに何度も述べたとおり,今回の視察中およびその前後,シンガポールの教育事情そしてポリテクを知れば知るほど,常に圧倒されるばかりであった.しかしながら,著者が出会ったポリテクのスタッフは皆,日本の高専とその実績に対し敬意を持って応対をしているようにも感じられた.今後の高専との連携・交流にも非常に積極的な姿勢であり,力強く進めていこうとしている熱意を知らされた.
ポリテクニクと高専の教育環境の差は,個人の力や高専独自の努力で簡単には埋められるものではないのは明らかだが,今後の連携・交流事業を通し,お互い様々な可能性を探って手法や考え方を共有し,よりよい環境やシステムが創生されることを期待している.
Temasekポリテクに熊本電波高専から留学している学生にProjectの発表会場で偶然会うことができた.緊張しながらも,非常に生き生きと,彼らの研究成果について英語でプレゼンをする姿に感銘を受けたことを最後に記しておく.
文 献
[1] The Singapore Education Landscape, Ministry of Education, http://www.moe.gov.sg/corporate/eduoverview/
Overview_edulandscape.htm.
[2] Yearbook of Statistics Singapore, 2007, http://www.singstat.gov.sg/pubn/reference/yos.html .
[3] 斉藤里実(編著・監訳),上条忠夫(編),シンガポールの教育と教科書,明石書店,2002.
[4] シンガポール職業能力開発の政策, Overseas Vocational Training Association, http://www.ovta.or.jp/info/asia/
singapore/07policy.html.
平成20年3月11日
〜ファッハホッホシューレ(独)・グランゼコール(仏)に学ぶ工業教育〜
実施期間:平成20年2月17日〜23日
生物応用化学科 講師 渡邊 勝宏
1.ドイツ・フランスの工業教育制度の調査概要
ヨーロッパの産業先進国における教育制度は,それぞれの国々で特徴的であり,日本における6-3-3-4制もしくは6-3-5制とは異なる制度を有している.
ドイツでは,小学校が4年制で,10歳で進路を決めなければならない.大学へ行くためには、9年制のギムナジウム(Gymnasium)へ行き,アビトゥーア(Abitur:大学入学資格)をパスしたものでなければ,大学(Universitat)やファッハホッホシューレ(単科・専門大学:Fachhochschule)といった更なる高等教育機関に進むことはできない.一方で,4-5-3制の職業コースが非常に充実しており,「マイスター(Meister)」としての社会的地位を築ける環境が整っている.小学卒業後,ギムナジウム(進学コース)に進まず,早くからマイスターとしての専門教育を受け,様々な業種の師範(マイスター)の下で修業した後にマイスターの称号が得られる.各分野でプロフェッショナルな知識と経験をもったマイスターは,社会でも高く評価され,大学卒よりも高い給料を手にすることも少なくない.最近のドイツでは,ほとんどの職種でこのマイスター制度が廃止されており,職業コースの教育課程修了後,ファッハホッホシューレに入学し,学位取得を目指す動きも出てきている.
ドイツの高等教育機関は,総合大学(Universitat)とファッハホッホシューレ(単科・専門大学:Fachhochschule)に大別される.科学技術の最先端研究を行なう大学と,産業界における実践技術者の育成を目指すファッハホッホシューレには明確な区分わけがなされている.しかしながら,先端科学技術の創製分野では両者が互いに協働する関係が見られる.いずれの教育機関も州立の機関が圧倒的に多く,ファッハホッホシューレにおいては,人口数万人規模の都市には,概ね一校設置されているようである.
フランスにおける初等・中等教育は,5-4-3制で,義務教育年限は16歳である.その後高等教育機関へ進むためには,18歳で受けるバカロレア(Baccalauréat:大学入学資格)と呼ばれる共通試験の成績によって,将来が決まると言っても過言ではない.バカロレアには,一般バカロレア,専門バカロレア,工業バカロレアがあり,一般の中にも理系(Scientifique、通称S)、文系(Littéraire、通称L)、経済・社会系(Economique et sociale、通称ES)と分野別に分かれている.
フランスの高等教育機関は,ドイツと同様に総合大学と各分野における「エリート」養成学校的な位置づけのグランゼコール(Grandes Ecole)に大別される.大学にはバカロレア試験に合格すれば,各大学の定員などにもよるが希望の大学に進学することができる.グランゼコールはフランス国内に200校ほどあり,その中でも国立で歴史のある学校が名門とされる.但し,「エリート」とは文字通り専門性の高い分野に関する特別な教育を受けた者という意味であり,グランゼコールは産業界において即戦力として活躍できるような職業人として鍛え上げる高等職業専門学校的な位置づけとなっている.そのため,日本の大学やアメリカの学士課程のような大学教育とは大きく実情が異なっている.
今回のヨーロッパ訪問の目的は,実践的工業技術者の育成に力を入れているドイツ・ファッハホッホシューレとフランス・グランデコールの見学を通じ,工業教育カリキュラムの調査と現地教育施設の視察,並びに地域社会との連携性に関する調査を行なうことである.
2.訪問先
実践的工業技術者の育成を行なっているドイツ・フランスの高等教育機関の中で,ドイツではファッハホッホシューレの一校でドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州ウルムにあるFachhochschule Ulm,フランスではグランゼコールの一校でフランス・ブルターニュ地方レンヌにある INSA Rennes(INSA:Institut National des Sciences Appliquées)を訪問し,工業教育への取り組みや地域連携について調査した.また,ヨーロッパの総合大学と工業教育学校の区分わけを調査する目的で,ドイツ・ウルムのウルム大学(Ulm University)を訪問した.
2-1 ドイツ・ウルムにおける工業教育機関調査
ウルムは,ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州にある人口11万の都市で,シュトゥットガルトから電車で約1時間,ミュンヘンから同1時間半の位置にある.街をドナウ川が二分しており,一方がバーデン=ヴュルテンベルク州ウルム(Ulm)もう一方がバイエルン州ノイウルム(Neu-Ulm)となっている.物理学者アルベルト=アインシュタインの生誕地としても知られ,商工業が盛んであり,高等教育機関として総合大学のウルム大学(Ulm University),専門大学のHochschule Ulmを有している.メルセデス・ベンツの本社があるシュトゥットガルトに至近なのもあってか,自動車関連の産業が盛んであり,ウルム大学と隣接してダイムラー・ベンツの研究施設が設置され,産学連携が盛んに行なわれている.
ウルムにおける訪問教育期間の概要は以下の通りである.
訪問先:Hochschule Ulm(Main Campus Prittwitzstrasse, Campus Albert-Einstein-Allee)
面会者:Stephanie Wagner;主対応者,Director of International Office
Prof. Dr. Klaus Peter Kratzer;Vice President for Academic and International Affairs
Prof. Dr. Bernhard Lau;Faculty of Mechatronics and Medical Engineering
概要等:
・ Bachelor Courseは5つのFacultyから構成(Electrical Engineering and Information Technology, Mechatronics and Medical Engineering, Computer Science, Mechanical and Automotive Engineering, Production Engineering and Industrial Management)
・ 全学生数は約3000人,30〜40人の学生で一つのSemester Groupを形成し学習している(1年毎)
・ 州立のFachhochschuleであるが,学費を支払っている学生は全体の10%,残りの90%は学費免除者や留学生からなっている.
・ Bachelor Degree Course=入学後〜6 or 7 semesters,標準的な年齢構成で18歳〜21歳が該当
・ Master Degree Course:Bachelor Course修了者,大卒資格者が対象,標準的な年齢構成で21〜23歳が該当
・ Bachelor Degree Courseにおいて,4ヶ月から6ヶ月間のインターンシッププログラム(TOP (=Two in One) Program-Skilled Worker and Bachelor of Engineering)が必修になっており,近隣企業内での実務訓練や企業開設の技術学校での研修が活発に行なわれている.
・ International Engineering Programs(IEP)の充実:EU諸国はもとより,北米・南米,南アフリカ,アジア(中国,マレーシア,ベトナムなど)から多くの学生が留学してきている.期間は3ヶ月間で,授業は英語で行なわれる.但し,ドイツ語教育には力が入っている.3つのプログラムが準備されている.日本からの留学生は今の所いない.(開講時期の違い?)
・ 中等教育学校やギムナジウムへのPR活動は活発に行なわれており,セメスターの合間にオープン・キャンパスを行なっている.
・ インターンシップ等を通じて近隣企業との結びつきは強い.学生の勉学のための支援(お金や設備投資等)が熱心に行なわれている.学校の財源は,州からの提供がメインではあるが,ドイツ国内の財団やEUの関連財団からの提供もある.
写真
医療系実験装置
医療系実験装置 イルミネーション製作(UNICEFとの協働事業) バイオリアクター 列車制御実験装置 電子制御実験室 風洞実験装置
訪問先:Ulm University
面会者:寿雅史(博士研究員,所属:Institute of surface science and catalysis,Prof. Rolf-Jürgen Behm Labo.)
概要等
・ ウルム中心部からバスで20分程,小高い丘の上に大学・研究機関のエリア(Albert-Einstein-Allee)がある.前述Hochschule UlmのCampus Albert-Einstein-Alleeもそのエリア内にある.見学したInstitute of surface science and catalysisは偶然にもHochschule Ulmのキャンパスの真向かいに位置していた.
・ 一大サイエンスパークが形成されており,エリア内にはサイエンスパークビルが設置され,産学の研究機能が集中している.ダイムラー・ベンツの研究所も存在.
・ 4つのFacultyから構成(Engineering and Computer Science, Mathematics and Economics, Medicine, Natural Sciences)
・ ドイツの国公立大学では,学費は無料であり,就学年数の規定もない.
・ 外国人ポスドクの数は非常に多い.基本的にはProf.との契約により雇用されるが,ドイツ国内の財団からの様々なFellowがあり,外国人ポスドクむけの募集もある.(ご案内いただいた寿氏も現在ドイツ・フンボルト財団の博士研究員である.)
・ 見学したProf. Rolf-Jürgen Behm Labo.では,無機系固体触媒に関する基礎研究が展開されている.日本の大学・公的研究機関に比べ非常にゆとりある実験スペースが確保されている.
写真
サイエンスパークビルディング ダイムラー・ベンツ研究所
2-2 フランス・レンヌにおける工業教育機関調査
レンヌは,フランス・ブルターニュ地方にあり,ブルターニュ地域圏の首府.パリからTGVで2時間程の位置にある.人口は約21万2千人.古くからブルターニュ地方の中心都市であり,また,学術都市としても名高い.日本の仙台市と姉妹関係にあり,東北大学とは各種連携事項があるようである.市中心部から車で10分ほどのところに広大な学術・研究エリアが存在し,レンヌ大学や訪問先のINSA Rennesをはじめ,企業の研究機関も多数存在しており,学生総数約6万人,研究者総数4000人を誇っている.訪問先の概要は以下の通りである.
訪問先:INSA Rennes
面会者:Prof. Dr. Juan Martinez;主対応者,Head of the
Alain Jigorel;Director
Prof. Dr. William Prince;Prof. of Civil Engineering, Head of Department
Prof. Dr. Sylvie Robinet;Director of Department
Prof. Dr. Jean-Noël Provost;Prof. of Electronic and Computer Engineering
概要等:
・ INSA Rennesは,INSA(Institut National des Sciences Appliqées:国立応用科学院)の5つのネットワーク(Lyon, Rennes, Rouen, Strasbourg, Toulouse)の一校.
・ INSA全校で1万人以上の学生が技術者教育を受けている.
・ レンヌ校は約1600人の学生(約1400人のsemesters学生と約200人のMaster,Ph D.学生)約150人の教員からなる.
・ 6つの学科より構成(Electronics and Computer Engineering, Electronics and Communication Systems, Civil Engineering and Urban Planning, Mechanical and Control Systems Engineering, Computer Science, Materials Science and Nanotechnology).
・ 5年制:内訳;L1=1〜2 semesters:INSA Rennesでの基礎教育(一般・専門).L2=3〜4 semesters:Rennes校,Strasbourg校,Toulouse校を共用しての教育,他のグランデコールのL1(1〜2 semestersに相当)からも受講可.L3=5〜6 semesters,L4=7〜8 semesters,L5=9〜10 semesters→Master Degree
・ 広大な大学エリア内に位置しており,大学の研究室はもとより,民間の研究機関との共同研究を行ないやすい環境が整っている.
・ 企業とのインターンシップ事業は活発に展開されている.1年次=1ヶ月,4年次=2ヶ月,5年次=4ヶ月.フランス国内に限らず海外にも展開.東北大学に短期留学していたPhD.の学生と面会.
・ 魅力ある一般教育:スポーツ・文化系科目が充実.学生のアクティビティー(クラブ活動)も活発.毎週木曜日午後は講義なしで,学生が自由に使える時間が設けられている.(訪問日は木曜日であり,午後は一気に学生が減った...)
・ 語学教育の充実−International programの充実:第一外国語=英語・ドイツ語,第二外国語=英語(第一でドイツ語を選択の場合は必修)・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・日本語(第一で英語選択の場合のoptional),第三外国語(optional)=中国語,ロシア語,アラビア語
・ 運営費は教職員のサラリー込で3000万ユーロ,授業料収入230万ユーロ,外部からの契約研究費(外部資金)160万ユーロ
・ 中国からの留学生が全学で60名
・ 中等教育機関(バカロレア課程)へのPR活動も盛んに行なわれており,ちょうど訪問した数日前にオープンキャンパスが開催された.
写真
3.総括
今回のドイツ・フランスにおける工業学校の視察において,産業先進国には,大学とは一線を画する「工業教育」を専門的に行なう学校が設置されていることがわかった.ファッハホッホシューレ(独)・グランゼコール(仏)いずれも,中等教育終了後の学生を最短5年で実践技術者に育て,学位としてMaster Degreeを与えており,更なるハイレベル教育・研究を行なうPhD.コースが設置されていることは共通であった.比較として大学の研究施設も見学したが,大学と一線を画するという意味合いは,大学では先端技術の追求であり,工業学校は,工業のバックグラウンドを学び,技術トレーニングを積み,産業界に貢献することだというのを肌で感じた.それぞれの学校で取り組まれている技術教育は,大規模且つ実践的であり,修了後企業に就職した後も,大した技術トレーニングの必要なく,企業の一員として活躍していくものだと予想できた.また,潤沢な運営資金をバックに,今や技術者必須のPCスキル養成のための設備が整備され,また,世界を股に掛ける技術者を育成すべく,海外でのインターンシップや短期留学,語学教育などに力を入れていた.海外からの留学生の受け入れを推進するプログラムを有しているのも共通であり,高専専攻科クラスの学生であれば,長期インターンシップにおいて導入の可能性があるのではないかと推察される.日本の高専での技術者教育は,後期中等教育機関の部分から専門的な教育を行なうことができ,専攻科まで含めると7年間一貫した工業教育が行なえるという点では,他に類がなく非常にユニークであり,訪問先での面会者も非常に興味を持たれていた.近隣企業との共同研究やインターンシップを通じて,近隣企業との連携を強化し,企業ニーズに沿った技術者教育を行なうカリキュラムの構築を模索することの重要性を痛感した.一方で,高専には,本科卒業後4年制大学に編入学する学生,専攻科修了後大学院に入学する学生が存在する.5年もしくは7年一貫で工業教育ができるメリットを活かし,技術者素養や国際性を育める科目・取り組みを,カリキュラムにバランスよく組み込む検討も必要ではないだろうか.
平成20年3月10日
実施期間:平成20年2月20日〜21日
機械工学科 講師 中尾 哲也
1.イギリスにおける教育制度について
イギリスは,5歳から義務教育が開始され,16歳でGCSE,17歳でGCE-AS Level,さらに18歳でGCE-A Levelといういずれも全国統一試験を受けるようになっている.GCSEとは,General
Certificate of Secondary Educationの略で,義務教育が修了したかどうかを意味する.通常14歳からGCSEに向けた勉強を行う.GCE-ASとは,General Certificate of
Education - Advanced Subsidiary Levelの略で,一般にA-Levelと呼ばれており,日本でいう高卒資格に当たる.これらは大学入学に必須の試験科目であり,日本の共通テストのようなものだと考えられる.その他,職業的知識や技術を学ぶために,GNVQ,VCE-ASなどがある.それぞれGeneral National Vocational Qualification, Vocational Certificate of
Education - ASの略である.GNVQは,FoundationとIntermediate Levelに分かれ,Foundation Levelは,GCSEのD-Gグレード,Intermediate Levelは,GCSEのA-Cグレードに相当する.これは,日本の工業高校と高専と同じような区分と考えられる.
イギリスには,Universityと呼ばれる高等教育機関は70校程度あった.しかし,Polytechnicが大学に昇格してから,全体で120校程度になったようである.これらの教育機関に入学するには,A-Levelテストに3科目合格して,その成績をもとに5つの大学を受験できるようなシステムになっていた.しかし,Polytechnicが大学昇格後に,10校の大学を受験することが可能となった.就職希望や技術者になる志向が高ければ,Polytechnicのような大学を選択するであろうし,より学術的な研鑽を積みたいと希望する人は,大学を選択するようである.
2.訪問先
CambridgeにあるAnglia
Ruskin UniversityとCambridge
Regional Collegeの2校を訪問し,工業教育への取り組みや地域連携について調査した.
2-2
Cambridgeについて
Cambridgeは,イギリス東部に位置し,Londonから電車で約1時間程度の距離にある,Cambridgeshireの州都である.人口は11.7万で,有名なCambridge大学は,Collegeの集合体であり市内のあちこちに見られる.産業は,機械産業,繊維産業が主だったが,近年はハイテク,IT関連が発展しており,マイクロソフトなどの多国籍企業が研究施設を設けている.また,国のバックアップもありベンチャービジネスも盛んである.町並みは英国情緒であふれていて,広い公園や自然も豊かで,勉学を行うには非常に良い環境であると感じた.
CambridgeのKing’ s Collegeの前で Cambrigeの町並み
2-3
Anglia
Ruskin Universityについて
所在地:East
Road Cambridge CB1 1PT
面会者:Sarah Schechter;主対応者,Director of Languages Enterprise
Nick
Hillman;Programmme
Leader EFL, Faculty of Arts, Law and Social Sciences
概要等:
・ 1858年に開校.Anglia Polytechnicという専門学校であった.
・ 1992年にAnglia Polytechnic Universityとして大学に昇格した.
・ 2005年にAnglia Ruskin Universityに名称変更
・ 場所は市の中心部にあり,キャンパスは広い.
・ 文系理系9学部,84分野に渡ってコースが設定されている.
Ø Art&Design, Audio and Music
Technology, Biological Science, Biomedical Science, Business Economics,
Business Information System, Business and Management, Civil Engineering,
Communication Studies, Complementary Medicine, Computer Science, Construction
Management Creative Music Technology, Drama, Electronics, Engineering, English,
Healthy, History, Internet Technology, Information Security and Forensic
Computing, Law, Marketing, Medical Biology, Midwifery, Philosophy, Psychosocial
Studies, Public Service, Social Policy など
・ 全学生数は約7000人で,留学生も多く,その割合はEU圏が最も多い.EU圏外では中国系が多い.日本人も若干名いるとのこと.
特徴等:
(1)インターンシップについて
・ Work Experienceを半年から一年間実施している.これは各専門分野で異なるが,非常に重点をおいて行っていることである.なお,技術部門では,IT関連の企業,自動車会社(フォード)に派遣されている.(※インターンシップのことをWork Experienceと呼ぶようである)
・ 技術系のWork Experienceを希望するのであれば,フォードなど自動車会社でも可能.学生が自主的にインターンシッププログラムを組み立てており,そのアドバイス,を主に行っているとのことである.
・ インターンシップ期間は主に夏季休暇等に行われるので,実質的に学生に休みは無い.
(2)教育システム
・ ほとんどのコースが,フルタイムでもパートタイムでも履修,資格取得が可能になっている.フルタイムで3年の場合は,パートタイムでは6年というようにコース修得年限が示されている.
・ コースに応じて様々なDiploma(国家資格)を取得することが出来る.
・ HND(Higher National Diploma)を2年で取得することが出来る.
・ BSc(Bachelor of Science)と呼ばれる(日本での学士)資格を3年で取得できる.最後に研究レポートを提出する場合が多いとのことである.
・ Quality of Control(教育の質)について維持向上することに非常に努めている.外部評価も以前に比べて多くなった(予算の配分が変わるため)
・ 自由にコースを選択,設定できる.非常に柔軟であるということを強調していた.
(3)学生支援について
・ 学生の医療費は無料とのこと.
・ 寮が完備されている.
・ 図書館やPCルームは,24時間利用可能.土日のみ時間制限あり.
(4)その他
・ PolytechnicからUniversityに改組してからも,主な部分では変更はない.
・ 企業からも資金提供を受けている.主に予算は国からがほとんどである.
・ NPOとの共同事業も行っている.
・ 日本からの留学生も居る(主に語学留学).また,EU圏,それ以外の留学生受け入れに力を入れている
・ 目的意識を持って学生は学ぶので途中で進路変更をする学生はほとんど居ない.1%にも満たないだろう.
Nick Hillman氏とキャンパス前で
24時間開架している図書館(PCもいつでも利用可能)
2-4
Cambridge
Regional Collegeについて
面会者:Dr Aminia Wakefield;主対応者,Head of International Office
所在地:Kings Hedge Road,
Cambridge, CB4 2QT
概要等:
・ 16歳から学生を受け入れており,様々な分野のカリキュラムがある.
Ø Art & Design,
Business & Office Administration, Catering, Hospitality & Reception, Childcare,
Computing & IT, Construction, Engineering, English as a Foreign Language,
Foundation Studies, Hair & Beauty Therapy, Health & Social Care, Media
Music & Performing Arts, Public/Uniformed Service, Science, Sports Studies,
Supportive Learning, Travel & Tourism, University Foundation Programme,
Work Based Learningなど
・ 全学生数は約2万人.
・ 日本からの留学生も居る(主に語学留学).また,EU圏,それ以外の留学生受け入れに力を入れている.
特徴等:
(1)教育システムについて
・ Entry Level,
Level1,Level2,Level3,Level4というようにLevelが分けられている.
・ Entry Level,Level1は,主にLevel2への準備期間になっている.
・ Level2は,BTECのFirst Deplmaまたは,Intermediate GNVQ程度である.
・ Level3は,高等教育,より専門的な仕事のための教育を受けるようになっている.
・ Level4は大学を目指すコースであり,2~3年の期間を要する.現在,各コースに拡張をしている.
・ Level4は,Certificaete/DeplomaがNVQ 4/5が取得できる.(NVQ=National Vocational
Qualifications)
・ 技術者育成のEngineeringコースは,Entry Level(15歳)から設定しており,Level3まである.Level3にて自動車整備,機械メンテナンスのBTEC National Diplomaを取得できる.
・ Engineeringコースには,Level4は現在設定されていない.
・ Level4が設定されているコースは,Childcare, Construction, English
as a Foreign Language, University Foundation Programmeのみである.
(2)学生支援について
・ 寮が完備されている.
・ トレーニング施設,レクリエーション施設,コモンスペース等が非常に充実していた.スポーツコースもあるからと思われる.
(3)その他
・ 国際留学生の受け入れについても積極的に行っているよう.
・ 就職は地元企業その他の分野で多く活躍している.
・ 予算は主に国からで,一部は企業から寄付がある.
Aminia Wakefield氏と 彼女の居室にて
Engineeringコースは,MotorVichelがあり,実践的な教育を受けられるようになっていた.
実際の車がおかれており学生は実習中であった.
3.総括
今回,Anglia Ruskin
Universityを訪問して,Polytechnicが大学へ改組されたが,カリキュラム自体は概して変わっていないとのことだった.他のPolytechnicも同様であろうと思われる.
Anglia
Ruskinでは,教育の質のさらなる改善と学生のレベルの底上げをしていきたいと強く語っていたのが印象的であった.そもそも,イギリスの学位,資格は非常に複雑であるとされ,1999年に欧州29カ国が著名したボローニャ宣言から,EU圏内では,教育の質保証のための協力推進,高等教育におけるヨーロッパの特質を促進することが命題となっており,これに適合するように努力をしているのが垣間見えた.ケンブリッジでは,ベンチャーの起業も盛んなので,企業連携にも重点を置いているとのことであった.もっとも超有名なケンブリッジ大学を擁しているので,ニッチな部分で共同研究やNPOとの連携をはからないといけないと思われる.また,国際連携については,EU内外から留学生を積極的に受け入れており,日本人からの留学も大歓迎である,とのことだった.まず,英語基礎をしっかりしてから,留学期間が2年ぐらいであれば,企業へのインターンシップも可能である.とにかく,要望を出してくれればそのようにコースを設定し,学生のためになるようなカリキュラムを編成する姿勢に圧倒された.
Cambridge
Regional Collegeは,学生の年代やカリキュラム構成から高専と同じようなものであった.高専と比較しての違いは,まず圧倒的に学生数が多いこと,選択できるコースが多いことが挙げられる.実際のキャンパス内の様子は,若者が多く非常に活気に溢れていた.また学内の施設も充実しており,国の教育にかける資金の多さを見ることができたと思う.工学については,専門的なコースであり,入学時に機械整備か自動車整備になってしまうが,より高い教育を目指す人にとっては,大学を目指すコースもあることが分かった.
平成20年5月20日
実施期間:平成20年5月10日〜16日
生物応用化学科 教授
伊藤 義文
1.目的
世界の工場として高度成長している中国の高等専門学校を視察調査することにより,産学官連携の形態や教育システムについて情報を収集し,広く社会に貢献できる若年技術者の育成を志向している日本の高専に,より確かな指針を得ることを目的に高等専科学校の1つ(承徳石油高等専科学校)を訪問した。
同時に,承徳市で開催された中日高専学校教育フォーラムは、中日の様々な分野からの参加者が集い,多様な目的・視点から総合的な討論の場となるため,技術者教育に関する他大学・高専の手法を効率よく収集することができため出席した。,なお、本フォーラムは佐世保高専の平成17年度現代GP選定プログラム「日中相互交流による若年技術者教育」の取組の一貫である。
2.中国における高等職業専科学校制度について
中国では次の6種類の高等職業専科学校が設置されており、今回の調査対象である高等専科学校はその1つに数えられる。現在高等専科学校は、中国の経済発展の追い風を受け急激なスピードで発展している。1998年から2006年まで、高専の募集学生数は43万人から293万人に増加し、在校生の人数は117万人から796万人に達している。2006年の末までに、設置された高専は1147校あり、現在チベットを除いて基本的に市レベルの都市に少なくとも1校の設置がなされている。
高専教育はもはや中国高等教育の半分を占め、中国高等教育がエリート教育段階から、大衆教育段階へ転換する原動力になっている。高専教育の持続的発展は生産の最前線に大数の実践的技術者を輩出し、経済と社会の発展に大いに貢献している。
(1)
短期職業学校(2年生)
(2)
職業技術学院
(3)
高等専科学校(3年生)
(4)
成人学校
(5)
大学内高等職業教育機構(4年生)
(6)
民営高等専科学校(3年)
これらの学校群は、基本的にはブルーカラーの養成機関で、ホワイトカラーを養成する大学とは一線を画しており、これらの学校群を終了後大学編入などの進路は設けられていない。又、教育機関としての内容は充実しているが、研究機関としては余り機能していない。なお、これらの学校群の中から大学に昇格する可能性があり、重点建設学校指定された学校では単なる職業訓練校から、創造性や応用性国際視野に富んだ専門技術者の育成へ方向転換しているとの事であった。
2.承徳石油高等専科学校
今回は前述の(3)に属する承徳石油高等専科学校を訪問した。本校は前述の「国家模範高等職業学校重点建設校」に指定され、中国内では高い評価を受けた高等専科学校である。
2.1 承徳市
北京から東北に300km、河北省の中心都市で人口300万人、避暑山荘や外八廊などの世界文化遺産があり、観光地として有名である。北京からの交通はバスが主であるが、道路事情は余り良くなく約5時間を要す。北京市、承徳市の近郊は高速道路を利用できるが、途中は一般道路を利用しており、決して輸送の安全が確保されているとは言い難い状況である。(近い将来高速道路の貫通が見込まれているとの事であった) また、日本から行く場合、往復とも北京に1泊する必要があり、経費面も若干の問題がある。
2.2
承徳石油高等専科学校
承徳石油高等専科学校は中国では最も古い工業職業学校として創設され、その歴史は次の通り。
1903:北洋工芸学堂として天津に創設
1958:承徳市に移転、承徳石油高等専科学校となる。
1997:全国模範高等工学専科重点建設学校に指定される
2006:佐世保高専と友好学校に関する協力協議書調印
2007:国家模範高等職業学校重点建設学校に指定される
(1)学校の規模・組織
学年 :3年制(1年生の就学年齢は18歳)
学科 :12学科+4補助学科
学生数 :9000人(各学年3000人)
教職員数 :教授32名、助教授120名、教育専門家11名ほか)
敷地面積 :80ヘクタール
建屋面積 :24万平方メートル
(2)設置学科等
【主要学科】 【補助学部】
・機械工学科 ・体育健康教育学部
・電気電子工学科 ・成人教育学部
・エネルギー工学科 【センター】
・化学工学科 ・工学センター
・情報工学科 ・図書館
・自動車工学科
・石油工学科
・建築工学科
・管理工学科
・人文社会学科
・数理学科
・旅行学科
学校全景 建築学科の実習教室
正面玄関と学生の熱烈歓迎 大講義室
(3)教育理念と今後の方向
教育理念 :職業と学習を結び合わせ、道徳と工芸を兼ねて習得する
今後の方向:創造性や応用能力と国際視野に富んだ専門技術者を育成するため
・新しい高等職業教育モードの創設
・国際交流の強化と国際協力の拡大
今回の中日高専学校教育フォーラムは、国際協力の一環として行われたものである。
また、学校上層部の発言等から推定すると、将来的には大学への昇格を狙っている様子が伺われた。
今回フォーラムに参加した日本側の全関係高専との友交誼の記しとして記念植樹を実施
3.第1回中日高専学校教育フォーラム
本フォーラムは、承徳石油高等専科学校と佐世保高専が幹事校となり、広く両国の高専に呼びかけ、「新時代の中日高専高職教育の発展と協力」をテーマに開催され、今後も継続していく予定がされている。(第2回は2010年日本で開催予定)
3.1フォーラムの参加者・内容(詳細はフォーラム資料参照のこと)
(1)中国側(中国語による発表)
・参加校:42校
・参加人員:64名
・発表内容:教育理念、方法等
*世界の工場を意識した、実業界向けの具体的な職業教育方法論
(2)日本側(英語による発表)
・参加校:9校(機構、佐世保、宇部、大島商船、富山、富山商船、茨城、有明、久留米、大分)
・参加人員:26名
・ 発表内容:中日の姉妹校交流事例、先端技術関連の研究事例
フォーラム閉会式(左より井上佐世保高専校長、河村高専機構理事、王紀安書記)
3.2 フォーラムの成果と課題
中国と日本の高専学校にとって、国際交流を強化したり、協力の範囲を広げ、それぞれの教育理念を理解し、各自が特色ある実践技術者教育モードを作り上げていくことは重要な意味のある活動であった。しかし、次のような課題もあり、今後の交流には課題解決の努力が必要である。
(1)言葉の問題:中国側は中国語、日本側は英語での発表で、理解が難しい。
(2)内容の問題;基本的に中国側は職業訓練教育システムに関する発表が主体であるのに対し、日本側は研究成果の発表が主体で、議論が噛み合っていない所もあった。
4.今回参加高専の中日の交流状況
高専名 |
交流先 |
現状 |
将来 |
備考 |
佐世保高専 |
アモイ理工学院 承徳石油高等専科 |
学生相互派遣 (6名、3週間) 教員長期相互受入 中日フォーラム開催 教員2名短期受入 |
現状の拡大 フォーラムの開催 学生受入 |
|
宇部高専 |
ハルピン工業大学 |
学長、学科長招待 |
教員交流 |
|
大島商船高専 |
青島大学ソフトウエアー 技術学院 |
共同シンポジューム 学生交流(10日間) |
シンポジュームを核に 教育・研究交流 |
|
大分高専 |
マレーシアポリテク |
学生・教員来日 交流会、シンポジューム |
海外実習 |
タイの農村職業訓練として、足踏みミシンを提供、学生・教員の指導 |
有明高専 |
遼寧石油加工大学 シンガポールポリテク |
専攻科生実習 教員1名相互派遣 共同研究プロジェクト 本科生実習(10日) |
現状拡大 相互交流 |
|
富山商船高専 |
英語圏6大学 中国・韓国・ロシア大学 |
語学交流 語学交流 |
|
|
富山高専 |
中国東北大学 |
シンポジウム開催 |
短期学生実習 |
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5.総括
経済発展目覚しい中国の生産現場に、大量の実践的技術者を送り出している高等専科学校(3年生)の1つである、承徳石油高等専科学校を訪問した。日本の高専と比較すると、まずは圧倒的に学生数が多く、学科数、教育内容も多様化している。実際のキャンパス内は若者の活気に溢れており、日本高専団への熱烈歓迎振りからしても国際交流には力を注いでいる様子が伺われる。学校の設備は充実しており、教科書も自前のものを開発し、中国の工学教育にかける資金の多さを感じることが出来た。
しかし、基本的には職業訓練を目的とした学校で、教員も企業経験者を優先し、研究活動は余り行われていないようである。高等専科学校から大学への編入コースも無く、いわゆるブルーワーカーを育成する機関で、より高度な教育を目指す学生は大学へのコースを目指している。
今後中日の友好関係の拡大により、学校同士の草の根的な関係強化は非常に重要視されてくることが予想され、今回フォーラムに参加した各高専もそれぞれ中日友好活動を繰り広げているが、高等専科学校と付き合う上での課題は次の通りである。
(1)
学生・教員の交流を盛んにするためには交通の便の良いところを選定する必要がある。
(2)
研究交流を主体と考えた場合、高等専科学校は対象として相応しくない。むしろ、大学との交流が望ましい。
(3)
高等専科学校では学生・教員の人的交流が目的となう場合が多く、相互の受け入れ態勢を整えておく必要がある。
以上
3年間の現代GPの取組を終えて,立ち上げられた共同研究の件数を数えてみました。2000年度からの累計にすると約200件の共同研究が実施されており,改めてその多さに驚くと共に,企業の開発者を交えて,卒業研究あるいは専攻科研究として共同研究に参画していた学生と熱いディスカッションをかわした会議室の光景が頭の中に去来しました。200人×年の共同研究は決して小さくはないと思います。高専を卒業して定年まで,40年の働く期間があるとすれば,5人分の技術者の人生に換算されるからです。
思い返せば,本取組の最初の一歩は,「意識改革」だったように思います。自分の興味の研究から学生のための教育の研究へ,論文になる研究から論文にならない研究へ,楽しい研究から使命感の研究へ,よくよく考えれば,損な役回りを引き受けてしまったのではないか。しかし,21世紀の技術立国日本を支えるのは,久留米高専の技術者でなければならないと考えたとき,本学科の教員の思いがそこに収斂され,久留米高専が世界一の工業技術学校になる夢を見たのかもしれません。
本報告書が,工業高等専門学校の技術者教育に努力しておられる多くの皆さまの参考になれば幸いです。
久留米工業高等専門学校
生物応用化学科 学科長
伊藤 義文
文部科学省
現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)
平成19年度〜平成21年度
テーマ:産学民連携共同教育による実践的技術者育成
(地域企業・社会との共同研究による地域活性化貢献と技術者養成の融合)
成果報告書
発行日 平成22年3月31日
発行 久留米工業高等専門学校
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